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ノウハウ 【2020年4月施行】民法改正!ビジネスパーソンが押さえておくべきポイント!

更新日:2021年11月2日

投稿日:2021年11月1日

【2020年4月施行】民法改正!ビジネスパーソンが押さえておくべきポイント!

【2020年4月施行】民法改正!ビジネスパーソンが押さえておくべきポイント!

2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」により、2020年4月1日に改正民法が施行されました。契約に関するルールを中心に、大幅な見直しがされています。

本記事では、ビジネスパーソンが特に知っておかなければならない改正点に絞って説明していきます

 

 

「平成の大改正」?民法改正の概要

 

民法とは、私人相互の生活関係一般に妥当する基本的なルールを定めたものです。

 

1896年に現行の民法が制定されて以降、大きな改正がされることがありませんでした。

しかし、社会経済の変化に伴って取引形態が多様で複雑化し、対応できていない内容であることが指摘されるようになりました。そこで、社会経済の変化に伴って120年ぶりに大幅な改正が行われました。

 

今回の民法改正では、民法全体に共通する規定である「総則」と、私人間の金や物などの取引に関する規定である「債権」が主に改正されました。

現在の判例や取引の実務で通用しているルールを条文上明確にし、一般の国民にとっても多少分かりやすくなったといえます。

 

今回、改正された事項は、従来の判例・一般的な解釈を明文化したもの解釈に争いがあった条項を明文化したもの、従来の条項・判例・一般的な解釈を変更したもの、に分けられます。旧民法とは異なる運用がされる条文も多くあるので、きちんと押さえておかなければなりません。

 

改正のポイント

 

改正されたもののうち、ビジネスに関わる項目について改正ポイントを解説します。



短期消滅時効・商事時効の廃止

 

消滅時効とは、一定の期間、権利を行使しないことによりその権利が消滅する制度のことです。

 

改正前民法では、職業別などの短期消滅時効(改正前170〜174条)が設けられており、現代社会においては、職業別の短期消滅時効に掲げられた債権と通常の債権で時効期間の取扱いに差異を設ける合理的な理由を見出すことは困難であるとの指摘がありました。また、商法でも別の時効が定められており、時効の適用を巡っては混乱を極めていました。

 

今回の改正によって、1〜5年の短期消滅時効と5年の商事時効はなくなり、債権の消滅時効の原則的な時効期間が統一されることとなりました。つまり、権利を行使できると知った時から5年(改正後民法166条1項1号)または権利を行使することができる時から10年(同項2号)のいずれか早い時点の経過によって時効が完成することとされました。

 

今までの法律では、短期消滅時効や商事時効が過ぎたと思われる契約書等も、時効期間が延長されます。改正前と改正後のどちらの民法が適用されるかに注意して、誤って処分しないようにしましょう。



遅延損害金に関する改正

 

遅延損害金とは、 金銭債務について、債務者が履行を遅滞したときに、損害を賠償するために支払われる金銭をいいます。約束どおりに金銭を返さないことに対するペナルティのようなものです。

 

法定利率の引き下げ

 

遅延損害金の利率には、「法定利率」と「約定利率」があります。 

 

当事者間で契約した利率を「約定利率」といい、契約で利率の定めがないときには、民法などの法令に定められた「法定利率」に従って計算します。約定利率が定められている場合、法定利率よりも約定利率が優先されます(民法419条1項ただし書)。

 

改正民法では、法定利率が年5%から年3%に引き下げられました。商法で定められた商事法定利率の年6%も廃止され、3%に統一されました。

 

そして、3年を1期として、1期ごとに基準割合を比較し、その差が1%以上になった場合に限り、1%単位で法定利率を変更するという変動制が導入されています(改正後民法404条)。

 

利率が引き下げられたため、普段から法定利率で契約書を定めている企業は、気をつけてチェックするようにしましょう。

 

契約の解除に関する改正

 

契約の解除とは、債権者が債務者の債務不履行(約束を守らず、契約を履行していないこと)を理由として、債務者に対する意思表示によって契約を終了させることをいいます(民法540条1項)。

「債務者の帰責性」の要件の削除

改正前 543条

履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

改正後 543条

債務の不履行が債権者の責に帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

 

今回の改正により、改正前民法543条ただし書の文言(「ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない」)が削除されました。

 

「責めに帰することができない理由」とは、大災害に起因するような故意的ではない理由を表します。

 

契約の解除は、もともと債務者に対する責任追及手段として立案されているのではないのであるから、債務者の帰責性を要件とするのは不自然であるという理由により、改正後の民法では、

債権者は債務の不履行が債権者の帰責性によるときは解除できないことが明文化されました(改正後民法543条)。

 

催告解除の要件を明確化

 

改正前 541条

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

改正後 541条

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

改正前民法では、催告解除について、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において」との記載がされているだけでした(改正前民法541条)。 

 

一方で、判例では、 相当期間経過時の不履行の部分が数量的にわずかである場合や、付随的な債務の不履行に過ぎない場合については、 契約解除を認めないと示されていました(最判昭和36年11月21日民集15巻10号2507号)。

 

そこで、判例を明文化する条文が定められました(改正後民法541条ただし書)。

 

判例を明確化したものなので、実務への影響は少ないかもしれません。しかし、「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」の判断は、個別の事案や、過去の判例を確認して慎重にしなければなりません。



無催告解除要件の整理

 

民法は、債権者が、催告をして履行をする機会を債務者に与えるまでもなく、直ちに契約を解除できる類型を定めています。今回の改正では、そのような解除ができる場面が条文ごとに整理され、よりわかりやすくなりました。詳しくは、以下の表をご覧ください。

 

債務の全部または一部の履行不能の関係

債務の履行が全部不能となった場合

催告をすることなく,直ちに契約の解除をすることができる(542条1項1号)。

債務の一部の履行が不能となった場合

①催告をすることなく,直ちに契約の一部の解除をすることができる(542条2項1号

)。

②残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき直ちに契約の解除をすることができる(542条1項3号)。

 

債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確にした場合

債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合

催告をすることなく,直ちに契約の解除をすることができる(542条1項2号)。

債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合

催告をすることなく,直ちに契約の一部の解除をすることができる(542条2項2号)。




契約不適合責任に関する改正点

 

契約不適合責任とは

 

契約不適合とは目的物が、その種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合しないことをいいます。

改正前民法では、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき」に、売主は責任を負うこととされていました(改正前民法570条、566条)。これは、法律用語で「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。

 

今回の改正では、「瑕疵」「瑕疵担保責任」と呼ばれていた用語が廃止され、「契約不適合」「契約不適合責任」に変わりました。

 

契約不適合により権利行使できる請求

 

買主は、目的物に契約内容と異なる点があることを見つけたときは、売主に対して、契約不適合責任として、以下の請求を売主に対してすることができるようになりました(改正民法562条〜564条)。

 

①履行の追完(目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し)(改正民法562条)

②代金減額(改正民法563条)

③損害賠償(改正民法564条、415条) 

④解除(改正民法564条、541条)



権利行使の期間制限

 

改正前民法では、買主が瑕疵の存在を知った時から1年以内に権利行使をしなければならない、という期間制限の規定が定められていました(改正前民法564条、566条3項、570条)。

 

しかし、今回の改正では、契約不適合責任に変わったのを機に、買主の権利と売主の負担の均衡を図るため、次のように変わりました。

 

目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合

 

買主は、目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合、その旨を1年以内に通知しなければ、追完請求などの権利行使ができません。

改正前民法では、1年以内に権利行使する必要がありましたが、今回の改正では、通知をすれば足りるので、実質的に買主の権利行使期間が延長されたといえます。

買主としては、1年以内に「目的物の種類・品質が、契約内容と違いました。」と種類と大体の範囲について通知すれば、その後いつ請求をしてもよいこととなります。

 

目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合

 

買主は、目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合、①と異なり、期間の制限なく権利行使ができます。数量が不足していることや、目的物に抵当権などが付着している等の契約不適合は、 外見上明らかであるので、売主の立場からしても、いつ請求されてもあまり不利益にはなりません。そのため、期間制限は撤廃されることとなりました。



商法上の契約不適合責任

 

商法には、民法の特則が定められているので必ず確認しましょう。内容は、以下の通りです。

 

まず、商人間の売買において、買主は、目的物を受け取った後、 遅滞なく検査しなければなりません(商法526条1項)。そして、契約不適合を発見したときは直ちに売主に通知しなければ、 契約不適合責任を追及できません(同条2項前段)。

ただし、検査で直ちに発見できないような種類・品質の契約不適合については、引渡し後6か月以内に発見して直ちに通知すれば責任追及ができます(同項後段)。

しかしながらここでも、数量が契約に適合していない場合は、検査時に発見して直ちに通知しなければ、 契約不適合責任は追及できないという点に注意しましょう(同項後段参照)。



保証契約に関する改正

 

保証契約は、債務者の債務の履行を担保することを目的として、債権者と保証人との間で締結された契約です。

 

保証人に対する情報提供義務の新設

 

保証人が保証債務の履行を求められることがあるかどうかを予測できるように、債務者は、「事業のために負担する債務を主たる債務とする保証」または「主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託」をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる情報を提供しなければならないとされました(改正後465条の10第1項)。

 

①財産および収支の状況

②主たる債務以外に負担している債務の有無、その額、履行状況

③主たる債務の担保として他に提供し、または提供しようとするものがあるときは、その旨およびその内容

 

情報提供義務に反した場合

 

以下の場合に、保証人は、保証契約を取り消すことができるようになりました(改正後465条の10第2項)。

 

①債務者が上記の事項について情報の提供をせず、または事実と異なる情報の提供をしたために、

②保証人となろうとする者がこれらの事項について誤認をし、それによって保証契約の申込みまたは承諾の意思表示をした場合に、

③主たる債務者による情報不提供・不実情報提供の事実について債権者が悪意・有過失である場合

 

このような場合に、保証人が、保証契約を取り消すことができることで、債権者の利益と保証人の予想外の履行を回避する利益との調整を図ることができるようになりました。



連帯保証人への請求が債務者に影響しない

 

連帯保証とは、保証人が債務者と連帯して保証債務を負担する場合をいいます。主たる債務が商行為により生じた場合、保証が商行為によるものであるときは常に連帯保証となります(商法511条)。つまり、ビジネスシーンではよく使われる保証形態です。

 

連帯保証では、一定の場合に、保証人に生じた事由が債務者に影響を及ぼします。

 

改正前民法は、債権者が連帯保証人に支払いを請求すれば、債務者にもその効果が及び、債務者との関係でも時効が完成されないこととなっていました。

しかし、債務者と連帯保証人がまったくの他人である状況もあり、連帯保証人に対対する請求を債務者がまったく把握していないといった事態がしばしばありました。

 

そこで、改正後民法では、債権者が連帯保証人に対して請求をしても、債務者との関係では時効の完成は猶予されないことになりました(改正後民法458条)。 

そのため、そのまま時効が完成して、債務者は返済の義務を免れることになります。





定型約款に関する規定の新設(548条の2〜4)

 

現代社会では、「約款」といって、多数の取引に対して一律に適用するために事業者により作成され、あらかじめ定型化された契約条項に基づく取引が多く行われています。

 

約款における契約では、当事者が個別に合意をする場面は少ないため、当事者の合意がない限り契約の拘束力は生じないという民法の原則上、約款の細則が契約内容になるかどうか争いになることもありました。

 

そこで、新法は、「定型約款」(548条の2第1項)という概念が新たに設けられ、その限度で「約款」の効力が認められるようになりました。

 

第548条の2  定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって,その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は,次に掲げる場合には,定型約款(定型取引において,契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。



「定型約款」に該当するための要件は以下の通りです。

①定型取引に用いられるものであること

 ①~1 ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であること

 ①−2 取引の内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものであること

②契約の内容とすることを目的として準備されたものであること

③当該定型取引の当事者の一方により準備されたものであること

 

どのような規約が定型約款に当たるか、そして取引の相手方にその内容を表示する方法、変更方法についてなどの規定をきちんと確認しましょう(548条の2〜548条の4)。

 

まとめ

ビジネスに関係があると思われる改正民法について、ピックアップして解説してきました。

今回の改正は、時効や利率についてなど、契約書を作成したり、読み込んだりする場面で必ず確認しなければならないポイントがたくさんあります。また、改正は総則・債権の幅広い部分に及んでいます。一度は条文にも目を通しておきましょう。

 

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