ノウハウ 不適切な契約業務で発生する25のリスク・課題とその解決方法
更新日:2025年05月1日
投稿日:2024年07月1日
不適切な契約業務で発生する25のリスク・課題とその解決方法

法務部門の中心を占める業務といえば契約業務。しかし契約業務には、法改正への対応や統制が効いているかといった様々なキーがありリスク管理が重要です。しかし、アナログで人の手に頼らざるを得ない作業工程により課題が多く残る分野でもあります。
本記事ではそうした25種の課題やリスクについてまとめ、システムを使った解決策についてご紹介します。
契約業務の全体像
契約業務と一言で言ってもその業務の内容には、契約書作成業務、契約書審査業務、契約書管理業務など様々な業務があります。
契約書作成業務は、事業部門等の依頼を受けて契約書案を作成する業務です。そして契約書審査業務は、相手方から提示された契約書案について自社に不利な条項が無いか等について確認する業務です。最後に契約書管理業務は締結済みの契約書を保管し、契約書の有効期限や保管期限を管理する業務です。
いずれも契約書に関する業務は事業部門からの依頼の受け付けからスタートし、契約書案の審査を行い、締結に至れば最終的には契約書管理業務へと一連の流れで構成されています。
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契約業務であげられる課題
契約業務では以下のような課題がよくあげられます。
受付窓口が複数あり案件の振り分けが困難
依頼の受け付け方法が口頭やメール、チャットなど複数ある場合、どれくらいの案件の依頼が来ているか把握するのが難しいといった課題です。
処理できないほどに窓口が分散すると、どのくらいの案件を抱えているのか把握しづらく、ぬけ漏れも起きやすいため案件の振り分けが困難となってしまいます。事業部の利便性を考慮した結果窓口を複数設ける場合もありますが、ミスが起きないよう連絡先をいくつかに絞るなど利便性とリスクマネジメントを両立した運用が好ましいです。
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期限管理のミスが発生しやすい
人の手で契約の期限管理を行う場合には、手入力の契約書管理台帳をソートして洗い出し作業をしたり、各フォルダを確認し管理対象の契約書を抽出するといった作業を経ます。手作業で行う場合、熟練度に関わらず誰しもある確率で入力ミスやソート忘れが発生し、更新/終了期限の見落としにつながります。
どうしてもミスが発生してしまうことが分かっているものに対しては、チェック回数を増やすといった対処療法的な方法ではなく、人の手で行わないといった根本的な解決方法が好ましいです。
必要な人に閲覧権限がなく契約書探しに手間と時間がかかる
契約書管理はただ単に締結済みの契約書を保管しておけば良いというものではありません。
必要なタイミングで契約書にアクセスできる状態で管理しておかなければ、後で契約書を見返す必要が出てきた場合に手間と時間がかかってしまいます。特に紙で契約書を保管している場合には取り出すのに時間がかかりがちです。
バージョン管理に手間がかかる
契約書案を作成する際には、内容が変更される毎に新たなバージョンが増えていきます。このバージョン管理のための方法には様々な方法がありますが、ファイル名の変更を手作業で行うケースが主流でしょう。
こうしたファイル名によるバージョン管理はファイルが増えるとどんどん分りにくくなっていき、どの時点のものか分らなくなってしまうケースは少なくありません。
証跡が残らずトラブルの際に反論できない
相手先が契約書の条項について趣旨を尋ねたり、解釈を確認するケースは少なくありません。こうした際のやりとりは、後に契約の解釈について争いが生じた際に有効な証拠となりますが、メール等で埋もれ、すぐに見つけ出せないことでいざという時に活用できなくなってしまう場合があります。
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承認ルートが正規なもの以外でなされる
契約書の承認は通常社内の稟議などを経て行われます。稟議にかけなければいけない契約とそうでないものが存在していたり、通常の承認ルートと異なる決定がなされている場合には、回覧が必要な関係者を通過せず締結されるケースが考えられます。
部署別管理できちんと管理されているか不明
契約書の管理方法は、1つの部門で一元管理する方法以外にもそれぞれの部門で管理するといった方法でなされる場合もあります。
こうした場合に、管理をそれぞれの部門に任せきりになってしまうと、契約書の管理状態についてまとめて監査できずきちんと管理されているか不透明になってしまいます。
作業が属人化する
契約業務は法的知識やノウハウ以外にも社内の情報や事業に関する情報など様々な情報を用いて審査・作成を行います。こうしたノウハウは担当者に帰属するため、特定の担当者に業務が集中しがちです。その結果、業務の属人化が起きてしまうケースが少なくありません。
締結リードタイムが長い
紙の契約書で締結する場合、当事者双方の押印がそろって初めて契約が締結されることになります。そのため、契約の締結に当たっては、押印して返送してさらに返送を受ける必要があります。また、承認や審査といった他部署を介する際の待ち時間が原因で締結までに時間を要することもあります。
その結果、契約締結までのリードタイムが長くなってしまうといった課題が生じます。
紙と電子で作業フローが異なり複雑
契約書には紙と電子契約書の2通りがありますが、紙の場合には押印手続きが必要なのに対し、電子契約の場合には電子署名が必要など契約の締結手続きが異なります。そのため、どちらを用いるかによって手順が異なるため手続きが複雑と感じることがあります。
手順が浸透しておらず問い合わせ対応に追われる
契約の締結までには相手方との交渉や社内承認を得るなど様々なプロセスを踏む必要があります。こうしたプロセスは明文化されないものが多く、多くの担当者は経験に基づいて行っています。
その結果、会社によっては事業部門の担当者がこうした契約締結の作業に馴れておらず、手続きについての問い合わせが多く寄せられるといった事態も考えられます。
ステータスが分からず滞留する
契約書の多くは契約書案を作成し、互いに案を検討し交渉を行い、最終案ができあがっていくという流れを取ります。こうした交渉を重ねていく際にはどちらにボールがあるのか分らなくなってしまい、自身依頼されているにもかかわらず、それに気がつかず案件が滞留してしまうといった事態におちいることもあります。
【関連記事】契約書のステータスが分からない?やりとりの問題を解決
各担当者へのリマインド作業が多く業務を圧迫している
前述のように案件が滞留し始めると、法務から各担当者へリマインドする数が多くなってしまいます。
また、更新期限の管理の際にリマインドを何度も行わねばならないなど本来の業務を圧迫してしまうリスクもあります。
契約業務の進め方が適切でない場合のリスク
案件の振り分けがうまくできずマネジメントに支障をきたす
受付窓口が複数あり案件の振り分けが上手くできないと、法務側のマネジメントに支障をきたします。
特にどの程度案件があるのか不明確だと、各部員の業務の負担状況が分からず適材適所に人を配置できずチーム全体の作業効率の悪化を招きます。
契約の更新時期を逃し、意図せず期間が終了してしまう
契約の更新時期を見落としてしまった場合、契約終了となり、ビジネスに必要な契約が締結されていない状態になります。
この結果、契約が終了してもビジネスが継続している場合、取引でトラブルが生じた際の解決方法について争いのリスクを抱えることになります。
契約書へのアクセス性が悪く業務効率が悪化する
契約書の管理がうまくできておらずすぐに契約書を取り出すことができない状態だと、過去契約の参照コスト、現行契約の確認コストが高くなります。
契約書を確認した上で進める業務の効率も悪化してしまい、業務全体の効率の悪化を招きます。
交渉の経緯が不明確になるリスク
契約のバージョン管理を手動で行うと、数が増えた場合にどのバージョンが最新か分からなくなってしまい、交渉の経緯が不明確になるリスクがあります。
不利益な契約となるリスク
契約の解釈について争いが生じた際に、以前のやりとりが残っていないと証跡が足りず自社に不利益な方向での解釈を受け入れざる得ないといった事態になってしまうリスクがあります。
内容について適切でない契約が締結されるリスク
契約の承認ルートが適切でないと、契約の締結前に確認すべき人が閲覧できず、結果として不適当な内容の契約を締結してしまうリスクが生じます。
必要な契約書を消失し内容が確認できないリスク
契約書の管理が不十分な場合、紙の契約書は特に紛失リスクを伴います。そうなった場合、内容が確認できず、取引でトラブルが生じた際の解決策が不透明になる可能性があります。
業務が属人化し他の部員が担当できないリスク
契約業務が属人化することによる最大のリスクは、他の部員が担当できなくなることです。契約業務は法務のコア業務のためこうした業務を一部の担当者しかできないというのは大きな問題です。
ビジネスを適切なタイミングで始めることができないリスク
契約締結までのリードタイムが長くなってしまうと、業務開始が遅れビジネスを適切なタイミングで始めることができなくないことで利益への打撃となります。
それぞれの手続きについて業務ミスなどが生じるリスク
電子契約と紙の契約書とで手続が異なるなど、手続きが複雑な場合には各作業でミスをするリスクが高まります。契約業務は基本的にミスは許されないためこうしたリスクは大きな問題を生む可能性をはらんでいます。
コア業務の効率が低下してしまうリスク
問い合わせ対応などに追われているとその業務が他業務を圧迫することになるためコア業務の効率が低下してしまうリスクが発生します。
ビジネスのタイミングを逃してしまうリスク
契約のステータスが不明確でどちらにボールがあるのか分からない状態になると、契約の交渉に不必要な時間がかかってしまいます。
その結果、ビジネスのタイミングを逃してしまい、適切なタイミングで契約が締結できないといったリスクが生じてしまいます。
契約業務の課題解決方法
・電子契約システム
電子契約システムは契約を紙では無く電子ファイルの形式で締結し、電子署名の方法を行います。そのため、契約のリードタイムを非常に短くできる点がメリットです。
また、契約書の管理も紙では無くデータになるため、必要な契約書へのアクセスが容易である点もメリットと言えるでしょう。
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・契約管理システム
契約書管理システムは契約書を電子ファイルの形式で取り込み、契約書をデータベース化します。
そのため、契約書管理台帳が自動生成されたり、リマインドを自動設定できたりと業務を一部手放すことができます。また、データベースにアクセスすることで好きなタイミングで必要な方が契約書へアクセスすることができるようになります。
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・契約ライフサイクル管理システム「CLM」
契約書案の作成段階から契約の交渉段階、契約の稟議・承認、契約の締結、契約の管理、締結後の管理まで一元管理が可能となります。
契約の交渉段階からその契約に係る情報が一元的に自動記録、管理されるため、各種機能を活用し業務一つ一つの効率を上げながら証跡紛失のリスク回避ができます。
また、一度入力した情報が契約交渉の後の業務に用いられるため、手入力による入力ミスや二重入力などの面倒な作業を大幅に軽減する事ができます。
【関連記事】CLM(契約ライフサイクルマネジメント)とは?システムや概念を徹底解説
まとめ
契約業務に関わる様々な課題はリーガルテックの導入によって解決が可能です。
その中でも、契約ライフサイクル管理システム(CLM)は、締結済みの契約書の管理や契約書の締結といった契約業務の一場面に限らず、契約締結前から契約締結後までの情報や業務プロセス全てを対象とするテクノロジーです。そのため、契約業務の様々な場面における課題を解決することができます。
契約業務に関する様々な課題でお悩みの企業様は、ぜひ契約ライフサイクル管理システム(CLM)の導入をご検討ください。
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