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ノウハウ 秘密保持誓約書とは?正しく作成し、内部情報の流出を防ぐポイント

更新日:2024年02月14日

投稿日:2021年08月16日

秘密保持誓約書とは?正しく作成し、内部情報の流出を防ぐポイント

秘密保持誓約書とは?正しく作成し、内部情報の流出を防ぐポイント

従業員から秘密保持誓約書を取得することは、企業が自社の内部情報等の漏洩・流出を防ぐ手段として非常に重要な意義を持ちます。しかし、形式的に誓約書へのサインをもらっているだけで、その法的効果が本当に認められるようなものなのか、注意して作成しているでしょうか。

秘密保持誓約書を作成していたとしても、法的効果が認められなければ、いざ紛争に発展した場合にただの紙切れになってしまいます。

どうしたら、秘密保持誓約書に法的効果を持たせることができるのか、そもそも秘密保持誓約書とはどんなものなのか、といった基本から見ていきましょう。

 

 

秘密保持誓約書とは

まず、秘密保持誓約書とは、業務上知り得た、企業秘密や顧客情報などの内部情報等の持ち出し・不正利用を防ぐために、従業員から取得する誓約書を言います。

つまり、自社の従業員に対して、情報を流出させないとの約束をさせる、書面となります。

 

秘密保持誓約書と秘密保持契約書

 

似た言葉として、秘密保持契約書というものがあります。

秘密保持契約(NDA)とは、自社が持つ秘密の情報を他の企業に提供する際に、情報を漏洩したり不正に利用されたりすることを防止するために結ぶ契約です。

他の企業と取引をする際に、相手の秘密を漏らさないように互いに約束するものですので、契約の相手方は、自社の従業員ではなく取引先等の他の企業になります。



契約と誓約の違い

また、そもそも「契約書」は、契約内容を記載した書類に当事者双方が署名捺印し、当事者双方が互いに、記載内容(契約内容)を遵守することを約束するための書類です。

一方で、「誓約書」は、当事者の一方からもう一方の当事者に差し出される書類であり、差し出す側のみ署名捺印することにより、差し出す側のみが誓約書の記載内容を遵守することを約束するための書類です。

ですので、秘密保持誓約書は、企業が自社社員に対して一方的に秘密を守るよう約束させるもので、企業は特に義務は負いません。

秘密保持誓約書を作成する必要性

秘密保持誓約書は多くの企業で取り入れられています。

なぜ作成がすべきかについて、作成しなかった場合、作成に不備があった場合に生じるデメリットからご紹介していきます。

不備がある場合、以下のデメリットの発生が考えられます。

 

・従業員が退職時に、機密情報を持ち出しても損害賠償等の法的な手段がとれない
・従業員により顧客情報や取引先の秘密情報が漏洩・不正利用された場合に、自社の情報管理に落ち度があったことを指摘され顧客や取引先から損害賠償請求をされる

 

以下で、秘密保持誓約書の法的効力を得るための書き方について紹介していきますが、法的効力が認められる秘密保持誓約書を作成すれば、従業員への損害賠償請求も可能ですし、落ち度がなかったものとして、顧客等から責任追及される可能性も無くなるでしょう。

秘密保持誓約書に法的効力を持たせるには

従業員から秘密保持誓約書にサインをもらったとしても、その誓約書自体に法的効力がなければ意味がありません。

 

そもそも“法的効果”があるとは、サインをした者が誓約書の内容に法的に拘束され、秘密保持誓約書があることによって企業が裁判で勝訴できる状態か、ということになります。

例えば、「従業員は秘密を漏らしてはならない」「従業員が秘密を漏らした場合、それによって会社に与えた損害について賠償する」といった文言があり、その誓約書について法的効果が認められれば、会社は従業員に対して秘密漏洩に対して損害賠償請求ができます。

 

今日、「秘密保持誓約書」などのワードで検索すると、たくさんの雛形が紹介されています。しかし、その中身について吟味することなく、安易にそのまま使用するといったことは避けるべきです。なぜなら、法的効果が認められない雛形が多数出回っているからです。

法的効力が認められるためのポイント

では、法的効力が認められるには、どのように作成すれば良いのでしょうか。

以下、法的効力が認められるために必要な内容及び記載のポイントについて説明していきます。

秘密情報の定義を明確に

もっとも重要なこととして、持ち出しや不正利用を禁止する対象である“秘密”を明確に定義すること、が挙げられます。

 

実際の裁判例を見てみましょう。

 

ある会社が、就業規則に「社員は、会社の機密、ノウハウ、出願予定の権利等に関する書類、テープ、ディスク等を会社の許可なく私的に使用し、複製し、会社施設外に持ち出し、または他に縦覧もしくは使用させてはならない。」と定め、「就業規則、その他の諸規定に従い、誠実に勤務する」旨の誓約書を提出させていました。

退職者が情報を持ち出し、企業が退職者に対して損害賠償請求をしたのですが、判決は「対象となる秘密を具体的に定めない、同義反復的な内容にすぎない」などとして、企業側の損害賠償請求を認めませんでした。

 

“秘密”の対象が特定されていないと、何が持ち出してはいけない秘密で、何がそうでないのか、従業員が判断できません。そうなると従業員に対する委縮効果をもたらすとして、法効果を認めないとの判断がされうるのです。

そして、“会社の機密、ノウハウ、出願予定の権利等に関する書類、テープ、ディスク等”との表記では、抽象的で法効果を認めないとの判断がされたのです。

 

では、法的効果が認められる記載とはどのようなものかというと…

 

第○条(秘密情報)

「本誓約における秘密情報とは、次に示される情報をいう。」

⑴顧客の住所、氏名、連絡先に関する情報

⑵顧客との取引内容、取引価格、取引履歴に関する情報

⑶顧客が提供した当該顧客に関する一切の情報

⑷その他、特に秘密保持対象として指定した情報

 

といった形で、箇条書きなどで“秘密情報”の内容を具体的に特定しているものです。

何が持ち出し禁止の秘密情報に当たるのかを従業員が判断できるかをメルクマールにすると良いです。

秘密保持義務の内容を明記

秘密を特定したら、どのような義務があるか、つまり秘密情報をどのように扱うかについて特定し、誓約させます。

“この情報が秘密です”ということが分かっても、どのように扱えば良いか分からなければ、結局従業員は何が良くて何がダメなのかわからず、萎縮してしまいます。したがって、義務の内容を特定することも、誓約書に法的効果が認められるための重要な要素です。

 

また、この内容については、企業の職種、従業員の地位や役職といったことに対応して変化することが考えられます。自社に必要な内容、その従業員に対して必要な内容を個別的に判断する必要があります。また、後述のように、従業員の昇進や役職変更に合わせて誓約書の内容も変更する必要がある場合もあります。

第○条(秘密情報の取扱い)

「秘密情報の取扱いについて、以下に定める事項を遵守することを誓約する。」

⑴他に開示しないこと

⑵会社の許可なく社外に持ち出さないこと

⑶会社の許可なく複製しないこと

⑷会社の業務以外の目的で使用しないこと

⑸秘密情報の毀損及び漏えいの防止に努めること

⑹万が一、漏えい事故が起こったときは直ちに会社に報告すること



退職後の秘密保持義務についても明記

情報の持ち出し、漏洩が考えられる場面として、従業員が協業他社に引き抜かれるなど、授業員による退職後の情報の持ち出し等があります。

そのため、退職後の秘密保持義務についても明記する必要があります。

第○条(退職後の秘密情報の取扱い)

「会社を退職する者は、秘密情報の取扱いについて、以下に定める事項を遵守することを誓約する。」

⑴退職時に秘密情報をすべて会社に返却すること

⑵退職後に秘密情報を使用しないこと

⑶退職後に秘密情報を他に開示しないこと

損害賠償、違約金の規定

秘密の遵守を誓約させたからといって、秘密の漏洩があった場合に無条件に損害賠償が取れるわけではありません。違反した場合の損害賠償の規定を明示することによって、従業員に損害賠償請求をされ得ることについての予測可能性を与える必要があります。

第○条(損害賠償等)

「秘密情報を開示するなど本誓約の条項に違反した場合には、会社が必要と認める措置を直ちに講ずるとともに、会社に生じた損害を賠償しなければならない。」

秘密保持誓約書を取得するタイミング

多くの企業では、入社時に誓約書を取得することが多いと思います。これはとても適切なタイミングです。しかし、入社時に取得したから安心、というのは大間違いです。

以下、適切な秘密保持誓約書の取得のタイミングについて解説します。

入社時に取得

入社時に誓約書を取得できないと、誓約書取得前の秘密情報の漏洩に対して、その従業員に責任追及できなくなってしまいます。

そのため、入社時に雇用契約書などと合わせて秘密保持誓約書を取得することは非常に重要です。

昇進時に取得

入社時に取得するだけで安心してはいけません。昇進により管理職に就いた場合など、より重要な企業秘密を扱うことになる場合もあります。その場合、入社時に取得した誓約書とは異なる内容の誓約書を改めて取得するべきです。

前述の「秘密情報の定義」の内容を、昇進後に触れることとなる情報を具体的に特定した上で、その内容に変更した誓約書を取得しましょう。

退職時に取得

前述のように、入社時に取得する誓約書についても、退職後の秘密保持義務についても明記すべきです。

しかし、入社後かなりの時間を経過し、社内の状況やその者の役職などが大きく変化している場合もあります。その場合に備えて、退職時に改めて退職後の秘密保持について誓約書を取得すべきです。

その他の注意点

秘密漏洩は絶対に避けたいものです。法的効力のある秘密保持誓約書が作成できたとしても、念には念を入れ、以下の点にも注意しましょう。

競業禁止誓約書もあわせて作成しよう

退職後について、秘密保持誓約書の法的効力が否定されてしまうと、不正競争防止法上の「営業秘密」に該当する情報でないと秘密保持義務が認められません。

「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(不正競争防止法2条6項)をいいます。すなわち、①非公知性、②管理性、③有用性の3要件を備ない限り、秘密保持義務が認められません。この3要件のハードルは非常に高いため、秘密保持誓約書の法的効力が否定されてしまった場合には、その誓約書の意義は失われてしまいます。

 

そこで、そのような場合に備え、競業禁止誓約書も取得しておきましょう。

 

競業禁止とは、従業員だった者が会社の事業と競合する事業を行うことを禁止するものです。不正競争防止法にいう営業秘密の成立要件を満たさないノウハウ等であっても、競業他社への就職や競業事業の立ち上げ等を禁止することで、間接的に会社の秘密情報流用のリスクを低減させることができるといえます。

 

競業禁止誓約書について法的効果が認められるか否かは、以下の点が総合考慮されます。

・守るべき会社の利益の有無
・従業員の地位が、競業避止義務を課す必要性のある立場であるか
・地域的な限定の有無およびその範囲
・存続期間
・禁止されるべき競業行為の範囲
・代償措置の有無

弁護士に相談

法的効力のある秘密保持誓約書を作成した、と自社判断で思っていたとしても、先ほど紹介した判例のように秘密漏洩について損害賠償が認められないケースもあります。

 

やはり法律の専門家である弁護士に相談して、法的効力の有無についてしっかりチェックしてもらうことが必要でしょう。

就業規則とは別に作ろう

就業規則に秘密保持条項を記載することも多いかと思います。もちろん二重三重に秘密保持義務を課すことも必要ですから、就業規則の秘密保持条項も重要です。

もっとも、就業規則の内容が従業員に対して周知されていない場合もあるため、やはり就業規則とは別に秘密保持誓約書にサインしてもらい、秘密保持義務を負っていることを従業員に認知させる必要があります。

電子契約の時代、誓約書も電子化できる!

企業規模が大きくなればなるほど、従業員の数は増え、それに伴い従業員全員から取得する秘密保持誓約書の数も膨大になります。原本の保管場所についても大きなスペースを要します。また、いざ裁判になった際などの証拠として誓約書を使用する場合、検索に非常に時間的コストを要することも考えられるでしょう。

このような管理コストを削減する方法として、誓約書を電子化してクラウドで管理する、ということが挙げられます。

リモートワークの時代、電子契約といった言葉もよく耳にするようになりました。電子契約についても、紙の契約の場合と何ら法的効力は変わりません。 誓約書についても電子契約と同じで、電子化した場合も内容面に問題がなければ当然に法的効力が認められます。

管理コストを削減し、正しい秘密保持誓約書の作成・管理をより効率的に行うことをお勧めいたします。

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