ノウハウ 海外の企業法務はAIをどこまで使っているか|利用率・時間削減・業務の担い手の変化を調査データで読む
更新日:2026年10月15日
投稿日:2026年10月16日
海外の企業法務はAIをどこまで使っているか|利用率・時間削減・業務の担い手の変化を調査データで読む

海外の法務AIの動向を、データで確認する
「海外の法務部門ではAI活用が進んでいる」という話を耳にする機会は増えています。ただ、それがどの程度の規模で、何がどう変わっているのかを、具体的な数字で確認する機会は多くないかもしれません。
本記事では、2024年から2026年にかけて公表された海外の調査を中心に、企業法務におけるAI活用の現状を整理します。利用率、時間削減の効果、業務の担い手の変化、そして新たに見えてきた課題の4つの観点から、主要なデータを紹介します。日本の法務部門が自社の現在地を考える際の参考材料としてご活用ください。
なお、国内の法務を取り巻く環境変化については「AI・DXで法務を取り巻く環境はどう変わったか」で整理しています。
観点1:利用率は1年でほぼ倍に
まず、法務部門でAIを使っている人や組織がどの程度いるかを示すデータです。
- ACC/Everlaw「Generative AI’s Growing Strategic Value for Corporate Law Departments」(2025年10月)
- 対象:30か国のインハウス法務657名
- 主な数字:業務で生成AIを使っている割合が2024年の23%から2025年は52%に
- FTI Consulting/Relativity「The General Counsel Report 2026」(2026年2〜3月)
- 対象:大企業の法務トップ(GC)200名超
- 主な数字:チーム内で生成AIを使っていると答えたGCが44%から87%に
- Wolters Kluwer「Future Ready Lawyer 2026」(2026年3月)
- 対象:米国・中国・欧州9か国の法務専門家810名
- 主な数字:日常業務で少なくとも1つのAIツールを使っている割合が92%
ACCとEverlawの調査は、業界団体とリーガルテック企業の共同調査です。インハウス法務で生成AIを使う割合が、1年で2倍以上になったことを示しています。同じ調査では、64%の回答者が、AIによって外部の法律事務所に依頼する業務が減ると見込んでいると報じられています。
FTI ConsultingとRelativityの調査は、売上高や従業員規模の大きい企業の法務トップを対象にしています。法務トップの生成AI利用は2023年の20%から2026年の87%まで増えたとされ、同調査では最も多い用途として要約が挙げられています。
Wolters Kluwerの調査では、92%が日常業務でAIツールを使っていると回答しており、AIの利用は法務の仕事の前提になりつつあるといえます。
💡これらの数字は、いずれも「使っているかどうか」を示すものです。使い方の深さ(毎日使っているか、どの業務で使っているか)は調査によって定義が異なります。利用率が高いことが、そのまま業務の進め方が変わったことを意味するわけではない点に注意が必要です。
利用が短期間で広がった背景
利用率がこれほど短期間で伸びた背景には、いくつかの要因が重なっていると考えられます。
汎用AIの法人向けプランの普及
主要な生成AIで、入力データを学習に使わない法人向けプランが整い、企業として利用を認めやすくなりました。情報システム部門がAIを全社に展開した結果、法務部門も使える環境が先に整ったケースもあると考えられます。
業務量の増加
FTI ConsultingとRelativityの調査の第1部では、法務トップの多くが、リスクと業務量の増加が加速していると回答しています。人員を大きく増やしにくいなかで、AIが業務量との差を埋める手段として位置づけられている面があると考えられます。
用途の具体化
要約、ドラフト作成、調査といった、効果を実感しやすい用途から利用が始まり、組織内で使い方が共有されるにつれて利用者が増えていったと考えられます。
なお、利用率の伸びはあくまで「使い始めた」ことを示す指標です。次に見るように、時間や業務の担い手がどう変わったかは、別のデータで確認する必要があります。
観点2:時間削減の効果が具体的に報告されている
次に、AIを使うことで処理時間や業務量がどの程度変わったかを示すデータです。
法律事務所の大規模な社内試験
英国の大手法律事務所Ashurstは、2023年11月から2024年3月にかけて、14か国23拠点の411名が3種類の生成AI基盤を試した結果を「Vox PopulAI」として公表しました。対照実験では、英国の会社関連書類の作成で80%、業界別の調査レポートの作成で59%、法的ブリーフィングの初稿作成で45%の時間削減が報告されています。
同レポートでは、時間削減はAIの出力が正しいことが前提であり、初期の出力が誤っていれば修正にかえって時間がかかるおそれがある点も指摘されています。
週あたりの労働時間の削減
Wolters Kluwerの「Future Ready Lawyer 2026」では、62%の回答者が、AIによって週の労働時間の6〜20%を削減できていると答えています。
- Ashurst(2024年・法律事務所の社内試験)
- 会社関連書類の作成:作成時間を80%削減
- 業界別調査レポートの作成:作成時間を59%削減
- 法的ブリーフィングの初稿:作成時間を45%削減
- Wolters Kluwer(2026年・法務専門家810名の調査)
- 62%が、週の労働時間の6〜20%を削減できていると回答
社内試験の数字は、その組織が自ら実施した試験の結果である点を踏まえて読む必要があります。それでも、特定の業務では作業時間が大きく変わり得ることを示す材料といえます。
観点3:業務を実行する主体が変わり始めている
利用率と時間削減は、いわば「効率化」の話です。海外の動向でより注目されているのは、その先の変化——業務を実行する主体そのものが、人からAIへ移り始めている点です。
報道や各社の公表では、次のような形の変化が伝えられています。
- 契約レビューという工程ごと外部に渡す:AIを活用して契約レビューを処理するサービスに工程ごと委託し、依頼元の法務担当者はレビュー工程から外れる。料金も時間単位ではなく契約1件単位になる、といった形が報じられています。
- 判断の一次処理をAIが担う:金融や保険の分野で、営業資料や投資家向け文書の規制チェックについて、規制や社内ポリシーを判定ロジックに変換し、AIが一次判定を行い人が最終確認する運用が報じられています。
- 取引の相手方もAIで動く:定型的な契約について、相手方がAIを使って交渉や再交渉を進める事例も伝えられています。
これらは個別企業の事例であり、提供元の公表値に基づくものも含まれます。ただ、共通しているのは、AIが「人の作業を手伝う道具」から「工程を保有する主体」に位置づけを変えつつある点です。人に残る仕事は、例外の判断と、AIに業務を渡す仕組みの設計・監督に寄っていくと考えられます。
AIエージェントの基本的な仕組みは「AIエージェントとは?法務担当者向けに仕組み・チャットAIとの違いを解説」で、相手方がAIを使う時代の契約審査は「取引相手もAIで契約書を作る時代の契約審査」で解説しています。
観点4:新しく見えてきた課題
AI活用が進むにつれて、新たな課題も調査で示されています。
若手の育成
LexisNexisが2026年1月に英国の法務専門家873名を対象に行った調査では、72%が、AIを使う若手は法的推論や論証の力を身につけにくくなると懸念していると回答しました。69%は、若手の検証・出典確認の力の不足を懸念しています。AIが学習を強めると考えた回答者は2%にとどまりました。
一方で、同じ調査では約3分の2が、AIを近道や代替ではなく「考えるための相手」として位置づけることが解決策になると答えています。
AIの出力の検証と責任
AIの出力を検証する責任や、結果を引き受ける責任をどう設計するかも、各国で論点になっています。EUのAI法は高リスクAIについて人間による監督を求めており、AIに業務を渡す範囲と、人が関与する水準を明示的に設計する必要性が高まっていると考えられます。
効果の測定
利用が広がる一方で、AIの効果を具体的な指標で測定している法務部門はまだ多くないとする調査もあります。何を成果として測るかは、今後の課題の一つです。法務の評価指標の考え方は「法務のKPIはどう変わるか」で整理しています。
データを読む際の注意点
海外の調査データを参照する際は、次の点に注意すると誤解を避けやすくなります。
- 調査の実施主体
- 理由:中立的な調査機関か、業界団体とベンダーの共同調査か、組織自身の社内試験かで性質が異なる
- 対象者と規模
- 理由:法律事務所と企業法務、法務トップと実務担当者では、回答の傾向が異なる
- 「利用」の定義
- 理由:試験的な利用を含むのか、日常的な利用に限るのかで数字が大きく変わる
- 対象国・地域
- 理由:法制度や法務部門の規模が日本と異なるため、そのまま当てはめにくい
日本の法務部門は、部門の規模が小さい傾向があること、弁護士法との関係で外部委託の形が異なること、日本語の契約実務であることなど、海外とは異なる前提を持っています。そのため、海外の変化がそのままの形で国内に広がるとは限りません。一方で、事業部門がAIで一次処理を行う動きや、AIを前提に業務を組み直す動きは、国内でもすでに始まっていると考えられます。
自社の現在地を確かめる4つの問い
海外のデータを自社に引きつけて考えるために、次の4つの問いで現在地を確認してみることをおすすめします。
問い1:AIを「使っている」のは誰か
法務部門の一部の担当者が個人的に使っている段階なのか、部門として使い方が定まっている段階なのか、事業部門も含めて業務の流れに組み込まれている段階なのかを確認します。海外の利用率の数字と比べる際も、どの段階の「利用」を指すのかをそろえると比較しやすくなります。
問い2:AIで変わったのは「時間」か「工程」か
AIによって個々の作業時間が短くなったのか、それとも工程そのものの担い手が変わったのかを確認します。たとえば、一次レビューの時間が短くなっても、依頼から締結までの日数が変わっていなければ、変化は作業単位にとどまっている可能性があります。
問い3:AIが参照できるデータはそろっているか
契約書、案件の履歴、過去の判断が、AIから読める形で1か所に集まっているかを確認します。データが分散していると、AIに任せられる範囲は個別の作業に限られやすくなります。
問い4:AIの活動と結果が、CLMに記録される仕組みになっているか
手元のリーガルテック製品で、AIが業務を行ったときに、AIが何をしてどういう結果を出したかがCLMに記録される仕組みになっているかを確認します。AIを業務で活用するうえで、この「記録」は非常に重要なポイントです。
記録が残る仕組みがあると、次のような利点があります。
- AIが再利用しやすくなる:レビューを含むさまざまな業務の結果が、その理由や背景とあわせて記録されていれば、次に似た案件を扱うときにAIがそれを呼び出して参照できます。毎回ゼロから判断するのではなく、過去の判断を踏まえた処理がしやすくなります。
- 人のナレッジマネジメントに活用しやすくなる:AIの判断と人の修正の経緯が案件ごとに残っていれば、担当者が過去の判断を振り返ったり、後任者に引き継いだり、自社の基準を見直したりする材料になります。
- 監督と説明がしやすくなる:AIがどの根拠でどう判断したかを後から確認できるため、出力の品質の確認や、監査・社内への説明がしやすくなります。
反対に、AIの処理結果がチャット画面の中だけで完結し、記録として残らない状態では、AIを使うほど知見が蓄積される流れはつくりにくくなります。
ここまでの問いへの答えをもとに、自社が次のどの段階にあるかを確認してみてください。
段階1:ツール期
- 状態の例:担当者が個別にAIを使い、業務の流れは従来のまま
- 次に検討したいこと:使い方の共有、対象業務の選定
段階2:支援期
- 状態の例:AIの出力を下書きとして使い、判断はすべて人が持つ
- 次に検討したいこと:前さばきなど定型工程の切り出し
段階3:分業期
- 状態の例:AIが一部の工程を担い、人は例外判断と設計・監督を持つ
- 次に検討したいこと:監督の水準の設計、対象の拡大
自動化の段階づけをより細かく確認したい場合は「法務業務のAI自動化の進め方|成熟度6段階と着手すべき5領域」が参考になります。
よくある質問
Q. 海外の利用率が高いのは、法務部門の規模が大きいからですか。
規模の影響はあると考えられますが、それだけでは説明しきれません。ACCとEverlawの調査は30か国のインハウス法務を対象にしており、さまざまな規模の組織が含まれています。規模よりも、AIの利用を組織として認め、使い方を定めているかどうかが利用率に影響している可能性があります。
Q. 海外の時間削減の数字は、日本の契約業務にも当てはまりますか。
そのまま当てはまるとは限りません。言語、契約実務、法制度、業務の分担が異なるためです。ただし、ドラフト作成や要約、定型的な確認といった業務の性質自体は共通する部分が多く、効果の方向性を考える参考にはなると考えられます。
Q. 統計を社内の稟議や説明資料に使う際の注意点は何ですか。
調査の実施主体、対象者、実施時期を必ず併記することをおすすめします。とくに、ベンダーが関与する調査や組織自身の社内試験の数字は、中立的な調査と区別して示すと、説明の信頼性を保ちやすくなります。最新の数字は各調査の公式サイトで確認してください。
日本の法務部門にとっての示唆
ここまでのデータから、日本の法務部門が自社の取り組みを考える際の示唆を3つ挙げます。
1. 「使うかどうか」より「どう組み込むか」が論点になる
利用率が高水準に達しつつある海外では、議論の中心が、AIを業務の流れのどこに組み込み、どこまで任せるかに移っています。ツールの導入だけでは業務の流れが変わらないケースも多いため、工程単位での設計が重要になります。考え方は「AIを入れても契約業務が変わらないのはなぜか」で解説しています。
2. AIが参照できるデータの整備が前提になる
AIが業務を担うには、契約、案件の履歴、過去の判断が、AIから読める形で1か所に集まっている必要があります。
3. 監督と育成の設計を、導入と同時に考える
AIの出力の検証、人に回す条件、若手の育成の仕組みは、導入後に後から考えるより、導入と同時に設計しておくほうが進めやすいと考えられます。
AIを選ぶことと、契約データを集めることを分けて考える設計として、外部の汎用AIから契約データを読み書きできる「オープン型CLM」という選択肢があります。ContractS CLMはその実装の一つで、「AIは選び、契約は1箇所に集める」という考え方に基づいています。考え方の全体像は「ベンダーロックインを避ける法務のAI活用の考え方」をご覧ください。
まとめ
海外の企業法務におけるAI活用は、次のように整理できます。
- 利用率:インハウスで23%→52%、法務トップで44%→87%と、1年でほぼ倍に増え、日常業務での利用は9割を超える調査もある
- 時間削減:ドラフト作成で45〜80%の削減が社内試験で報告され、週の労働時間の6〜20%を削減できているという回答も多い
- 担い手の変化:契約レビューの工程委託や、規制チェックの一次判定をAIが担う事例など、実行主体がAIへ移り始めている
- 新たな課題:若手の育成、AIの出力の検証と責任、効果の測定が論点になっている
- 自社で確かめたいこと:AIの活動と結果が、理由や背景とあわせてCLMに記録される仕組みになっているか。記録があれば、AIが過去の判断を再利用しやすくなり、人のナレッジマネジメントにも活用しやすくなる
数字は調査ごとの前提とあわせて読みつつ、自社の業務のどこにAIを組み込むかを考える材料として活用してみてはいかがでしょうか。あわせて、手元のリーガルテック製品で、AIが行った業務の結果がCLMに記録される仕組みになっているかを一度確認しておくことをおすすめします。
主な出典
- ACC/Everlaw「Generative AI’s Growing Strategic Value for Corporate Law Departments」(2025年10月)
- FTI Consulting/Relativity「The General Counsel Report 2026」(2026年2〜3月)
- Wolters Kluwer「Future Ready Lawyer 2026」(2026年3月)
- Ashurst「Vox PopulAI: Lessons from a global law firm’s exploration of generative AI」(2024年6月)
- LexisNexis「The mentorship gap」(2026年2月)
本記事はContractS株式会社のコンテンツマーケティングチームが、エンタープライズ企業の法務・経営・管理部門向けに執筆したものです。AIエージェントを契約業務に組み込む際の判断は、必ず自社の業務特性・リスク許容度に応じて行ってください。本記事はリーガルアドバイスではありません。














