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ノウハウ 【給与のデジタル払いが将来可能に?】2021年に施行された資金決済法の改正ポイントは

更新日:2021年10月6日

投稿日:2021年08月26日

【給与のデジタル払いが将来可能に?】2021年に施行された資金決済法の改正ポイントは

【給与のデジタル払いが将来可能に?】2021年に施行された資金決済法の改正ポイントは

2021年5月1日に、資金決済法の改正が施行されました。

今回の改正資金決済法では、為替取引上での資金の保全や不適切な利用の防止を目的とした改正が盛り込まれています。

 

資金決済法の改正に伴い、現在政府は「給与デジタル払い」の解禁を検討しています。

2021年の改正資金決済法では、具体的に何が改正され、企業はどのような対応が必要になるのでしょうか。

 

そこで本記事では、改正資金決済法についてポイントを解説した上で、企業が必要な対応や、給与デジタル払いについて詳しく解説します。

 

 

 

資金決済法とはどんな法律?

そもそも資金決済法とはどのような法律なのでしょうか。

資金決済法の改正ポイントを確認する前に、資金決済法について概要を知っておきましょう。

 

資金決済法とは、2010年4月1日に施行された日本の法律であり、「前払式支払手段」「資金移動」「資金精算」の3つの資金決済サービスに関する規定が設けられています。

 

それぞれの概要については、下記のとおりです。

前払式支払手段

前払式支払手段とは、金額が明記・記録された、物品の購入やサービスを受ける際に代金の支払いとして利用できるもののことを言います。

 

たとえば、「Suica(スイカ)」などの交通系電子マネー、「nanaco(ナナコ)」や「WAON(ワオン)」などの電子マネーがこれに当たります。

 

資金決済法における前払式支払手段の規定の役割としては、消費者から請け負った電子マネーとして変換されたお金を保護するためです。

 

電子マネーだけでなく、商品券やプリペイドカードなどのサービスも該当します。

 

また、前払式支払手段は、「自家型前払式手段」と「第三者型前払式支払手段」の2つに分類されています。

 

対象となるサービス

具体的なサービス例

自家型前払式支払手段

消費者と発行者との間でのみ代金の支払いに使用できる前払式支払手段

・スマホアプリ等のゲーム内のみで使用できるポイントやコイン

・発行店舗のみで使用できる商品券

第三者型前払式支払手段

発行者だけでなく外部の事業者との間でも使用できる前払式支払手段

・Suicaなどの交通系電子マネー

・加盟店の店舗すべてで使用できる商品券

など

資金移動

資金移動とは、お金を移動する送金サービスのことです。

 

資金決済法における資金移動の規定の役割としては、消費者の送金時のお金を保護するためです。

なお、銀行の送金サービスに関しては資金決済法の対象外とされており、銀行以外が為替取引を営むことを言います。

 

資金清算

資金清算とは、銀行間の資金決済のことです。

 

個人や企業が内国為替取引を行う際、それぞれの持つ取引口座がお互いに異なる銀行の場合、取引銀行間で債務・債権が生じるため、資金決済法として規制が設けられています。

 

資金決済法上で対象となる事業者には、以下2つの義務が設けられています。

 

  1. 利用者の安全性を確保するため、取引時の本人確認を行う。不審な取引があった際に取引の届出を行う。
  2. 事業者が倒産した際のリスクから利用者を保全するための資産保全義務

 

資金決済法上の規定に違反した場合は、懲役または罰金が生じます。

資金決済に関する法律 第八章 罰則 資金決済法第百七条〜第百十八条

 

なお、懲役期間や罰金額は違反した内容によって異なります。

 

資金決済法の改正ポイントは?

それでは、2020年6月5日に成立し、2021年5月1日に施行された資金決済法の改正ポイントを解説していきます。

 

改正ポイントは、大まかに下記の3つとなります。

 

  • 資金移動業での3つの類型の創設
  • 前払式支払手段の不適切な利用を防止するための措置の整備
  • 一般利用者間の為替取引サービスを資金移動業の規制対象とする改正

 

それぞれ詳しく解説します。

 

参照:金融庁

資金移動業での3つの類型の創設

資金移動業には元々類型は設けられていませんでしたが、2021年の資金決済法改正では3つの類型が設けられました。

 

従来の資金決済法では、為替取引は100万円を上限としたもののみ認められており、個人による高額商品の購入や企業間での決済への対応ができませんでした。

また、送金サービス利用者の約90%は、5万円以下の少額送金を占めています。

 

これらの高額決済・少額決済の需要に対応するために、以下の3つに分類されるようになりました。

 

  1. 第一種資金移動業(100万円を超える高額送金を扱う事業者)
  2. 第二種資金移動業(100万円以下の送金を扱う事業者)
  3. 第三種資金移動業(5万円以下の少額送金のみを扱う事業者)

 

3つの類型は主に取引可能金額での違いがあり、規制もそれぞれ異なります。

第一種資金移動業

第一種資金移動業は、100万円以上の高額送金の需要のために設けられた類型です。

 

第一種資金移動業に分類される資金移動業者は、100万円以下の為替取引も扱い可能ですが、100万円以下の取引でも第一種資金移動業に対応した規制が適用されます。

 

銀行同様の高額送金が認められている第一種資金移動業ですが、決済途上の資金が保護される銀行と異なり、倒産時の決済途上の資金の保護の取り組みが行われていないため、資金の受け入れから保全までの短期化が目指されます。

 

また第一種資金移動業において、移動先や移動する資金額、移動日等の明示がない利用資金の受け入れは認められていません。

第二種資金移動業

第二種資金移動業は、改正前の資金移動業に相応しており、100万円以下の取引に適用される類型です。

 

なお、改正前で利用者資金の滞留などが見受けられたため、今回の改正資金決済法で新たに規制が加わり、利用者の受入額が100万円を超えた際の取引と資金の関連性の確認を行う体制整備(資金決済法第51条)等による規制の強化が行われました。

第三種資金移動業

第三種資金移動業は、5万円以下の少額取引の需要のために設けられた類型です。

 

5万円以下の少額の為替取引のみを扱う事業者に対して、規制を緩和した類型であり、資金繰り負担の改善・コスト低下が図られます。

 

なお、1件あたりの総金額と受入額はいずれも5万円以下とし、上限を超える取引に関する業務は行ってはいけません。

前払式支払手段の不適切な利用を防止するための措置の整備

2021年改正資金決済法では、前払式支払手段においての規制の必要性が議論されたため、不適切な利用を防ぐための措置の整備が図られるようになりました。

 

具体的な例として以下の3つが挙げられます。

 

  1. 他者にチャージ残高を譲渡するなど支払手段の移転が可能な前払式支払手段に対して目的に応じた適切な上限設定を設けること
  2. 繰り返し一定以上の金額の譲渡が行われているなど、不正の疑いがある取引を検出するための体制の整備
  3. 利用者の資金保全の方法や趣旨、還付の権利内容に関する情報を提供すること

【一般利用者間の為替取引サービスを資金移動業の規制対象とする改正】

2021年改正資金決済法では、一般利用者間での為替取引サービスに該当するものは、資金移動業の対象となりました。

 

「paymo(ペイモ)」などの割り勘アプリなどは収納代行と称していても、実質的には為替取引サービスに該当します。

 

具体的な該当要件は以下の2つです。

 

  1. 受取人が個人であること
  2. 収納代行業者が資金受入時に債務が減少しないもの、または連帯責任者の弁済等による債権者への信用の供与をした際に発生する債券の回収のために資金を移動させるもの(割り勘アプリなど)

 

なお、上記2に当てはまらない場合も、「メルカリ」のようなエスクローサービスの仲介サービスやアプリのプラットフォームのいずれにも該当しない場合、為替取引に該当します。

 

資金決済法改正で企業が必要な対応は?

ここまで2021年改正資金決済法の内容について解説してきました。

 

では、資金決済法改正において企業がとるべき対応や注意するべきポイントはあるのでしょうか。

 

結論から言うと、主に「電子マネー等の上限変更」と「資金移動業の登録」の2つの対応が必要となります。

 

1つ目は電子マネー等の上限変更です。

 

資金決済法改正により、事業者によっては電子マネーの上限変更を行う必要が出てくる場合もあります。

 

上限変更を行った事業者の具体例として、PayPay株式会社は2021年6月1日より、自社決済アプリ「PayPay(ペイペイ)」でのプリペイド残高「PayPayマネー」の上限額を減額し、500万円から100万円に引き下げました。

 

同日以降100万円を超えるチャージは不可になり、既に100万円以上の残高を超えるPayPayマネーを保有している場合、決済や送金、出金のサービスが利用停止となりました。

 

利用者に対しての説明では「より安心してサービスをご利用いただくため」としていますが、資金決済法改正が実際の理由です。

 

改正資金決済法では、100万円を超える資金移動業者は第一種資金移動業者に該当するため、内閣総理大臣の認可を取得する必要があり、滞留規制もより厳格になりました。

 

そのため、利用者の利便性も考慮した上で、残高上限を100万円としたと見受けられます。

PayPayのように、企業によっては電子マネーの上限を見直す対応が必要です。

 

2つ目は資金移動業の登録です。

 

先述したとおり、収納代行と称して実質的には為替取引サービスに該当する一般利用者間の送金サービス(割り勘アプリなど)は、資金移動業の登録に対応する必要があります。

 

なお、収納代行や宅配の代金引換など、受取人が企業である送金サービスに関しては問題視されていないため、資金移動業の登録の義務はありません。

 

実現する?給与のデジタル払いとは?

キャッシュレス決済などの近年のデジタル資金化による新たな取り組みとして、政府では「給与のデジタル払い」が検討されています。

 

給与デジタル払いとは、雇用者への給与を現金や銀行口座ではなく、資金移動業者のサービスに支払う仕組みのことです。

 

資金移動業者は現在約80業者が事業者として登録しており、すべて資金決済法において規定されています。

現在、厚生労働省を中心として、2021年早期に給与のデジタル化の制度の実現に向けて検討されています。

 

しかしそもそも、なぜ給与デジタル払いが検討されているのでしょうか。

 

政府が給与デジタル払いを検討している理由としては、日本国内のデジタル化の成長戦略が挙げられます。

 

日本は現在、他国と比較してデジタル化が遅れており、マイナンバーカードの普及や脱ハンコなどの政策とともに、重要な普及促進としての1つとして推し進められています。

 

また日本は、近年の少子高齢化や人口減少により、生産性の向上が必要であるのが現状です。

そのため、政府はキャッシュレス決済の普及促進を行っています。

 

キャッシュレス決済が普及することにより、デジタル化が進み、店舗の無人化などにより生産性の向上が可能です。

 

しかし、現状のキャッシュレス決済のほとんどは、銀行口座からキャッシュレス決済サービスへチャージするチャージ方式が採用されており、給与が銀行口座に振り込まれた後にデジタルマネーへ変換する必要があります。

チャージ方式による利用者の手間を省くためにも、給与デジタル払いが検討されています。

 

給与デジタル払いが実現することにより、主に以下の2つのメリットがあります。

 

  1. 労働者の選択肢が広がり利便性が向上する
  2. 外国人労働者が働きやすくなる

労働者の選択肢が広がり利便性が向上する

給与デジタル払いが実現すると、キャッシュレス決済を促進している時代の背景で、決済サービスへのチャージの手間が省けます。

 

チャージの手間が省ければ、資金移動にかかる手数料を減らせ、ポイント還元なども受けやすくなるのもメリットです。

必要な時に都度チャージする手間が省け、キャッシュレス決済の利便性がさらに向上するでしょう。

外国人労働者が働きやすくなる

給与デジタル払いにより、外国人労働者が働きやすくなり、人材確保にも繋がります。

 

しかし、外国人労働者が銀行口座を国内で作るのは、言葉でのコミュニケーションや書類記入などの際の問題もあり、時間や手間がかかるのが現状です。

 

給与支払いの方法が増えることで、より柔軟な対応が可能になり、企業側にとっても労働者の人材確保がしやすくなります。

給与デジタル払いの解禁に向けての課題

政府は2019年12月から給与のデジタル払いについて議論しており、2020年度中の制度改正を図っていましたが、想定より課題が多く実現が遅れており、2021年度のできるだけ早期に実現する方針を示しています。

 

大きな課題としては、資金移動業者が破綻した際に労働者の資金が保全できるかどうかが挙げられます。

 

現状の資金決済法では、資金移動業者が破綻した場合、履行補償金から配当を受けることになり、利用者への資金還付が長い日数を要するため、資金決済法の見直しが必要です。

また、給与デジタル払いが普及した際の、雇い主が雇用者への支払い方法の強制の可能性も出てきます。

 

デジタル払い以外の給与支払いを拒否する可能性があるため、強制されないような仕組みを整える必要があります。

そのほかにも多くの課題が残されており、給与デジタル払いの解禁の実現に至れないのが現状です。

まとめ

本記事では、2021年に施行された資金決済法の改正について解説してきました。

 

現在の資金移動業者のサービスの多くは、最大でも数万程度の支払いが中心で、家賃や請求書の支払いなどに関しては銀行口座のような使い勝手をなかなか実現できていません。

 

また、雇い主側は給与デジタル払いへの切り替えや雇用者へのシステム周知に手間がかり、給与デジタル払いが実現しても、大手の企業が部分的に導入する程度になる可能性もあります。

 

メリットがある一方で、本記事で述べたような多くの課題が残されているため、実現に向けての適切な対応・改善が重要です。

 

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