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ノウハウ 【2021年施行】会社法の改正ポイントを解説!

更新日:2024年03月5日

投稿日:2021年08月3日

【2021年施行】会社法の改正ポイントを解説!

【2021年施行】会社法の改正ポイントを解説!

2021年3月1日に、改正会社法が一部の規定を除いて施行されました。今回の改正では、主にコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を目的とした改正が盛り込まれています。


2021年の改正会社法では、具体的に何が改正され、実務上、どのような対応が求められるのでしょうか。


そこで本記事では、2021年の改正会社法についてポイントを解説したうえで、企業が実務上求められる対応まで詳しく解説します。

 

 

会社法とはどんな法律?

そもそも会社法とはどのような法律でしょうか。改正会社法のポイントを確認する前に、会社法がどのような法律なのかを確認しておきましょう。

会社法の規定内容

会社法の規定内容を、「章」までまとめたものが下表です。ご覧のとおり、会社に関するさまざまなことが規定されています。


今回の2021年改正会社法においても、幅広い部分にて改正がなされました。

第1編:総則

第1章:通則

第2章:会社の商号

第3章:会社の使用人等

第4章:事業の譲渡をした場合の協業の禁止等

第2編:株式会社

第1章:設立

第2章:株式

第3章:新株予約権

第4章:機関

第5章:計算等

第6章:定款の変更

第7章:事業の譲渡等

第8章:解散

第9章:清算

第3編:持分会社

第1章:設立

第2章:社員

第3章:管理

第4章:社員の加入及び退社

第5章:計算等

第6章:定款の変更

第7章:解散

第8章:清算

第4編:社債

第1章:総則

第2章:社債管理者

第3章:社債権者集会

第5編:組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付

第1章:組織変更

第2章:合併

第3章:会社分割

第4章:株式交換及び株式移転

第5章:組織変更、合併、会社分割、株式移転及び株式交付の手続

第6編:外国会社

 

第7編:雑則

第1章:会社の解散命令等

第2章:訴訟等

第3章:非訟

第4章:登記

第5章:公告

第8編:罰則

 

会社法の成立背景

会社法が施行される前まで、明示32年に制定されたカタカナ表記の商法によって規定がなされていました。


そこで会社法制をわかりやすく現代語化しながら再編成したものが、平成17年(2005年)6月29日に成立した会社法です。比較的新しい法律だといえます。


成立した会社法は、取締役の人数規制や最低資本金制度の撤廃などの措置を含み、平成17年(2005年)7月26日に公布され、平成18年(2006年)5月1日に施行されました。


つまり会社法は、2006年に公布された比較的新しい法律です。

会社法の改正ポイントは?


それでは、2021年3月1日に施行された2021年改正会社法の改正ポイントを解説していきます。


2021年の会社法は、主にコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を目的として改正がなされました。法務省のパンフレットでは、以下のように説明しています。

会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図ることを目的とするものです。

引用元:法務省「会社法が改正されます」(PDF)


2021年改正会社法のポイントは、大まかに以下のとおりです。

  • 株主総会資料の電子提供制度の創設
  • 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備
  • 取締役の報酬に関する規律の見直し
  • 会社補償及び役員等のために締結される保険契約に関する規律の整備
  • 社外取締役の活用等
  • 社債管理に関する規律の見直し
  • 株主交付制度の創設
  • その他

株主総会資料の電子提供制度の創設

株主総会資料の電子提供制度は、Webサイトで株主総会の資料を提供できる制度です。


これによって株主の議案検討期間を確保しつつ、株式会社としては株主総会資料の印刷や郵送にかかる時間と費用を削減できます。

 

▶関連記事:株主総会とは?取締役会との違い・開催時期などをわかりやすく解説

電子提供措置をとるための条件

電子提供措置をとる場合、その旨を定款に定めておかなければなりません(会社法第325条の2)。

電子提供措置の対象となる書類等

電子提供措置の対象となる書類等は、以下のとおりです(会社法第325条の2)。

  • 株主総会参考書類
  • 議決権行使書面
  • 計算書類および事業報告
  • 連結計算書類

電子提供措置における義務規定

電子提供措置をとる場合、電子提供措置期間中、継続して一定の情報について電子提供措置をとらなければならないという義務が規定されています。

  • 電子提供措置開始日:株主総会の3週間前または書面での招集通知のいずれか早い日まで
  • 電子提供措置期間:電子提供措置開始日から、株主総会の日後3ヶ月を経過するまでの間


一定の情報とは以下のとおりです(改正会社法第325条の3)。

  • 株主総会の日時および場所
  • 株主総会の目的事項
  • 株主総会参考書類および議決権行使書面の記載事項(書面投票できる場合)
  • 株主総会参考資料の記載事項(電子投票制度がある場合)
  • 議案の要領(株主提案があった場合)
  • 計算書類および事業報告の記載事項(取締役会設置会社で取締役が定時株主総会を招集する場合)
  • 連結計算書類の記載事項(取締役会設置会社かつ会計監査人設置会社であり、取締役が定時株主総会を招集する場合)
  • 修正の旨および修正前の事項(情報を修正した場合)

電子提供措置をとる場合の通知の特則

電子提供措置をとる場合、株主総会の招集通知は、非公開会社でも公開会社と同じ「2週間前まで」とされることに注意が必要です(改正会社法第325条の4)。


また、取締役会を設置していない非公開会社は、招集通知の期限について、定款で1週間を下回る旨を定めることができました。


しかし電子提供措置をとる場合にはこの規定は適用できず、「2週間前まで」に統一されます。

株主の書面交付請求

電子提供措置が定款で定められている株式会社の株主は、承諾をした場合を除き、書面による資料の交付請求ができます(改正会社法第325条の5)。


なお書面交付請求日から1年を過ぎると、書面交付の終了を通知できます。この場合、1ヶ月以上の催告期間を設け、異議がなければ株主の書面交付請求権を消滅させることが可能です。

電子提供措置の中断

電子提供措置の中断とは、電子提供措置が実施されている情報(Webサイトに掲載されている情報)が株主に提供できない状態になることなどをいいます(改正会社法第325条の6)。


つまり、わざとではない限り、何らかのWeb上のトラブルを指すものです。この場合、取締役に課されている電子提供措置の義務を満たしません。


ただし、以下すべての要件を満たせば、電子提供措置の効力に影響を及ぼさないとされています。

  • 株式会社が善意(わざとではない)かつ重大過失がないまたは正当事由がある
  • 中断時間の合計が電子提供措置期間(少なくとも3ヶ月と2週間)の10%以下
  • 電子提供措置期間中の中断は、中断時間の合計が電子提供措置期間の10%以下
  • 中断を知って速やかに、中断した旨および内容について電子提供措置をとった

つまり中断時間の合計が電子提供措置期間の10%以下で善管注意義務を履行していれば、電子提供措置にかかる義務の履行が擬制されます。

 

▶関連記事:進む?株主総会の電子化 株主総会資料電子提供制度が2022年施行予定

株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

2021年改正会社法では、株主提案権の濫用を制限する規定が設けられました。


具体的には、同一株主総会において、1人の株主が提案できる議案数の上限は10までと制限されています(改正会社法第305条第4項)。

みなし議案数

株主が提出する議案の数は、以下の議案はまとめて1つの議案とみなされます。

  • 役員等(取締役・会計参与・監査役・会計監査人)の選任に関する議案
  • 役員等の解任に関する議案
  • 会計監査人を再任しないことに関する議案
  • 定款変更に関する2以上の議案について、議決内容が相互に矛盾する可能性がある場合

10を超える議案が提出された場合

同一株主から10を超える議案が提出された場合は、取締役が10までの議案を決めることとなります。


もし提案株主が提案議案に優先順位をつけている場合、取締役はこれに従わなければなりません。

取締役の報酬に関する規律の見直し

2021年改正会社法では、取締役の報酬に関する規律の見直しがされました。

取締役の個人別報酬の決定方針を定める義務

取締役報酬はインセンティブ付与の手段となるものです。取締役報酬のインセンティブとしての機能を適切に機能させるため、取締役報酬の決定手続を透明化する必要があります。


このような背景から、取締役の個人別報酬の決定方針を定める義務が規定されました(改正会社法第361条第7項)。

 

対象となる場合

  • 報酬内容が定款または株主総会の決議で定められていない場合

対象取締役

  • 監査等委員である取締役を除く取締役

対象会社

  • 公開会社かつ大会社である監査役会設置会社で、有価証券報告書の提出義務がある会社
  • 監査等委員会設置会社

決定方針事項

  • 個人別報酬の額または算定方法の決定方針
  • 指標内容および報酬額または算定方法の決定方針(※1)
  • 非金銭報酬等の内容および額もしくは数または算定方法の決定方針(※2)
  • 報酬を与える時期または条件の決定方針
  • 報酬の決定を第三者に委任するときは氏名・地位・担当・委任権限等
  • 報酬内容の決定方法
  • その他重要な事項

※1:業績連動報酬等がある場合
※2:非金銭報酬等がある場合

株主総会の決議事項に「株式等の数の上限」が追加

取締役に株式等を付与する場合、株主総会の決議事項に「株式等の数の上限」が追加されました(改正会社法第361条第1項)。

上場会社が取締役報酬として株式を発行する場合は出資の履行を要しない

上場会社が取締役報酬として株式を発行する場合は、株式の発行に伴う出資の履行を要しないものとされました(改正会社法第202条の2等)。


そのため、払込金額や払込期日を定める必要はありません。

会社補償及び役員等のために締結される保険契約に関する規律の整備

改正会社法では、会社補償および役員等のために締結される保険契約(いわゆるD&O保険)に関する規律が整備されました。


これまで明文化されていないかった点を、会社法で明文化したという位置づけです。

補償契約に関する規定の新設

ここでいう補償とは、役員が職務執行に関して法令違反が疑われたり、第三者に対する損害賠償責任を負ったりする場合に、会社が役員に対して費用を補償することをいいます。


改正会社法では、会社と役員間における補償契約について、補填の対象となる費用や対象外となる費用などについて明文化されました(改正会社法第430条の2)。

 

補償契約

  • 株式会社が役員等に対して以下の費用補填を約束する契約

補償契約内容の決定

  • 株主総会の決議(取締役会設置会社は取締役会)

補償対象費用

  1. 職務執行に関し、法令違反疑いや責任追及請求への対処費用
  2. 職務執行に関し、第三者への損害賠償責任を負う場合の賠償損失等

補償禁止費用

  • ①に関し、通常要する費用の額を超える部分
  • ②に関し、役員が任務懈怠(けたい)によって会社に対する損害賠償責任を追うとき、当該責任に係る部分
  • 役員の職務執行に関し、悪意または重大過失で損害賠償責任を負うときは全額

補償契約の内容を決めるときは株主総会(取締役会設置会社は取締役会)によって決議し、役員が会社に対して損害賠償責任を負うときや悪意または重大過失による場合を除き、通常要する費用は補填の対象となります。


補償契約が締結されれば役員職務執行の適正性が確保されると見込めますが、補償対象はかなり狭いというのが実態です。

役員等賠償責任保険契約(D&O保険)に関する手続規定の新設

役員等賠償責任保険(いわゆるD&O保険)についても、補償契約と同様に必要な手続規定が新設されました(改正会社法第430条の3)。


D&O保険についても、契約内容の決定は株主総会(取締役会設置会社は取締役会)による決議を要します。

社外取締役の活用等

改正会社法では、社外取締役の活用等に関する規定も盛り込まれています。それぞれ解説します。

社外取締役に業務執行を委託できる

本来であれば、社外取締役は株式会社の業務を執行すると、社外取締役としての地位が失われます(会社法第2条第15号イ)。


しかし今回の改正会社法で、以下を満たす場合には社外取締役に業務執行を委託できることが規定されました(改正会社法第348条の2)。

  • 株式会社と取締役の利益が相反する状況にある
  • その他取締役が業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがある
  • 取締役会の決議(非設置会社は取締役の決定)

具体的には、MBO(マネジメント・バイ・アウト)や親子会社間での取引時に社外取締役の活用が期待されています。

社外取締役の設置義務化

改正会社法では、上場会社等の社外取締役設置義務が規定されました(改正会社法第327条の2)。


上場会社等とは、以下の要件をすべて満たす会社をいいます。

  • 公開会社
  • 大会社
  • 監査役会設置会社
  • 発行株式について有価証券報告書の提出義務がある

なお改正前も、上場会社等は原則として社外取締役の設置が規定されていましたが、株主総会で理由を説明すれば置かないで良いことになっていました。


改正前の実態としては、東証一部上場企業の99.9%が社外取締役を設置しています。

 

▶関連記事:取締役会とは?会社法に沿って開催頻度・議題・議事録作成など解説

社債管理に関する規律の見直し

社債管理について、社債権者の権利を保護するため、原則として社債管理者を設置することが規定されています(会社法第702条)。


しかし同条但し書によれば、社債の金額が1億円以上である場合などは、社債管理者を設置しないことができました。


改正会社法では、社債管理者を設置しなくても良い場合、金融機関や弁護士などの社債管理補助資格者に社債の管理補助を委託することができます(改正会社法第714条の2)。

株主交付制度の創設

子会社化(M&A:第三者に対する合併や買収)を行うとき、その手法の1つとして株式交換があります。


株式交換とは、発行済株式の全部を親会社となる会社に取得させる手法です。改正前は株式交換を行うのは完全子会社化するときに限られていました。


そこで改正会社法では、完全子会社化に限らず、自社株式を子会社化する会社の株主に交付できる制度が創設されています(改正会社法第2条第32の2号・第774条の2等)。

その他

ここまでが改正会社法の主なポイントですが、その他の改正もされています。

  • 社債権者集会の決議による元利金の減免に関する規定の明確化(改正会社法第706条第1項)
  • 議決権行使書面の閲覧謄写請求権の拒絶事由の明文化(改正会社法第311条第4項および第5項)
  • 会社支店所在地における登記の廃止(改正会社法第930~932条)
  • 成年被後見人等の取締役欠格条項の削除等(改正会社法第331条第1項および第331条の2)

会社法改正で企業が必要な対応は?

ここまで2021年改正会社法の内容について解説してきました。本章では、企業が必要な対応についても紹介します。


早速、対応したい事項について下表にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。改正趣旨をよく理解したうえで対応を検討することが重要です。

 

株主総会

  • 定款の変更
  • 対象となる書類や情報の電子提供体制準備
  • 書面交付請求の対応準備

取締役等

  • 報酬内容を定款に記載することを検討
  • 決定方針事項の法制度を注視しつつ対応
  • 株式を報酬とする場合、株主総会決議事項に「上限数」が追加されたことに留意
  • 業績連動型報酬の導入検討

補償契約・D&O契約

  • 補償契約やD&O保険契約の内容を決定するときは株主総会等の決議を要することに留意
  • 補償契約やD&O保険契約の内容が改正法に適合しているかの検討

株主交付制度

  • MBOや親子会社間取引における社外取締役の活用を検討

まとめ

今回は、2021年改正会社法についてポイントを解説しました。全体としてコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を目指すための改正となっています。


内容としては、株主総会資料の電子提供や業績連動型報酬の導入が可能・容易となった一方で、取締役の報酬内容については個人別に決定方針を策定することが求められ、透明性の向上が図られています。


企業の経営者・法務部門・総務部門においては、今回の会社法改正の趣旨を理解し、適切な対応をとることが重要です。

 

▶関連記事:コーポレートガバナンスとは?意味や目的、強化方法をわかりやすく解説

 

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