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ノウハウ 二段の推定とは?判例や電子契約時の考え方も徹底解説

更新日:2024年05月10日

投稿日:2023年12月4日

二段の推定とは?判例や電子契約時の考え方も徹底解説

二段の推定とは?判例や電子契約時の考え方も徹底解説

契約書に関する情報について調べてみると、「二段の推定」という言葉が使われることがあります。

これは民事訴訟の際の証拠となる契約書に対して用いられる考え方であり、契約や法務に関わる仕事の担当者であれば覚えておきたいポイントです。

 

今回は二段の推定とは何か?なぜ二段の推定が必要なのか?電子契約でも二段の推定は適用されるのか?などについて詳しく解説します。

法律に関わる用語は難しいイメージがありますが、分かりやすく解説していますのでぜひ最後までご覧ください。

 

 

二段の推定とは?

二段の推定とは、ある契約に関して紛争が生じた際、民事訴訟における証拠として契約書が提出される場合に用いられる考え方です。

端的に述べると「契約書に実印が押されている=その契約は本人の意思で正しく成立したもの」と推定する考え方で、これに基づき契約書が証拠として強弱が判断されます。

二段の推定の根拠

二段の推定において、契約書が本人の意思で交わされたものと推定される根拠について詳しく知っておきましょう。

 

二段の推定では、文字通り二段階の「推定」を根拠に契約書の正当性を判断します。

 

まず、契約書に実印が押されていれば、その実印は契約者本人の意思で押されているものと推定されます。

一般的に個人の実印は第三者に勝手に持ち出されて使われることはないという、経験則を根拠とした推定です。この推定を「一段目の推定」と呼びます。

 

また、民事訴訟法第228条4項を根拠に、本人の意思で実印が押された契約書があればその契約は正しく成立したものであると推定します。これが、「二段目の推定」です。

“私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。”

引用:民事訴訟法 | e-Gov法令検索

 

二段の推定では上記二段階の「推定」を根拠にして、契約書の正当性を立証するための考え方として用いられます。

法律上の「推定」の定義

一般的に推定とは、不確実な事柄に対して様々な要素から「推し量る」ことを指す言葉です。

しかし法律上では当事者間で別段の取り決めがない場合、または反証が挙がらない場合に、不確実な事柄について「法律に基づき”コレ”であるとする」と考えることを推定といいます。

 

ちなみに、「法律に基づき”コレ”であるとする」という考え方を指す言葉として「みなす」もあります。

法律上の「みなす」はどちらかといえば断言の意味合いがあり、「○○とみなす」と言われていることに対して反証は認められません。

 

ちょっとした言葉遣いの違いでも、法律上の意味合いは大きく変わるため覚えておくと良いでしょう。

二段の推定における実印と認印の違い

二段の推定に関する理解を深めるために知っておきたいポイントとしては、実印と認印の違いも挙げられます。

 

実印は役所で印鑑登録をした印鑑で、重要な取引の際の契約に用いられます。

そのため厳重に保管されるケースが一般的であるうえに、印鑑証明書で本人の実印との印影の一致を容易に証明できます。

このことから、二段の推定においては十分な根拠として成り立ちます。

 

しかし認印は印鑑登録が不要で、誰でも簡単に同一のものを入手することができます。また、厳重に保管されていることが一般的であるとも言えません。

押印した人物が本人であると証明することが難しく、実印よりも推定力は劣る場合が多いです。

 

とはいえ、二段の推定でキーポイントとなるのは「第三者に使われたという可能性が極めて低いといえる印鑑が押されているか」です。

実印であっても慎重に保管しているかどうかは個人によって変わります。

具体的にどのような事情が背景にあるのかによって、実印が持つ推定力の強さは異なるため注意が必要です。

 

署名のみでも補充的な立証があれば推定が適用される

契約書の正当性を証明するうえで、民事訴訟法第228条4項にも明記されている通り、押印だけでなく署名が残されている場合も二段の推定が適用されます。

 

ただし一段目の推定にあたって、その署名が本人が書いたものであると立証されなければなりません。

「署名したとされる本人」が自分で書いたことを否定した場合、筆跡鑑定や証人による証言が必要です。

これにより本人が書いた署名であると立証されれば、必然的に二段目の推定も適用されて契約の正当性が認められます。

 

推定力としては押印の方が強力かつ流れもスムーズですが、必ずしも署名だけの契約書は証拠にならないわけではないのです。

二段の推定が必要な理由

二段の推定は、契約時に交わされた契約書が本人の意思で作成されたものであることをスムーズに証明するために必要な考え方です。

 

まずは契約書の必要性について、改めて理解しておきましょう。

契約の定義は「契約書を交わすこと」に限られておらず、当事者同士の口約束だけでも成立します。

しかし万が一当事者間でトラブルに発展し、一方が「契約していない」と主張した場合、口約束の成立では、その主張が事実に反すると証明することができません。

それに対しあらかじめ契約書を交わしている場合、その契約書が「契約されたという事実」の証拠になります。

 

ただし、どちらか一方が相手方の同意を得ず契約書を作成し、それが本人(相手方)の意思によるものだと主張する可能性もあります。

そこで二段の推定を適用すれば、主に押印という観点から契約が真正に成立したことを証明できます。

あとは真正に交わされた契約書を根拠とし、両者で話し合いや訴訟を進められるようになります。

二段の推定の基になった判例

二段の推定という考え方は、昭和39年5月12日の最高裁判例が基礎となっています。

“私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出されたものであるときは、反証のないかぎり、該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定するのを相当とするから、民訴法第三二六条により、該文書が真正に成立したものと推定すべきである。”

引用:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan 

 

要するに、「契約書を作成した本人の印章(ハンコ本体)によって出た印影(ハンコを押した際に紙へ写る朱肉の跡)がある場合、反証がない限りは民事訴訟法に基づき真正に契約が成立したと推定すべき」と述べています。

 

なお、引用元で根拠とされている民事訴訟法第326条は現在の228条4項にあたります。

二段の推定は電子契約の際も適用される?

紙媒体の契約書は、実印が押された署名により二段の推定が適用されます。

しかし、電子契約の場合は実印の代わりに「電子署名」を行うことになります。

 

電子署名は電子契約において印鑑・署名に相当しますが、紙媒体の契約書と同じロジックで二段の推定を適用できるのでしょうか。

 

結論から述べると、実印と同様に電子署名にも二段の推定が適用されるとは限りません。

理由としては現時点で電子署名の真正な成立について争った判例がなく、経験則に基づいて一段目の推定について判断された実績がないからです。

 

また、電子署名法第3条には以下のような記述があります。

“電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。”

引用:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索 

 

やはり電子署名法においても、第三者に使われないように管理された電子署名を用いることが真正な契約成立の要件とされています。

しかし、この記述では「ローカル署名型」を除く電子署名の利用が過度に制限されているのではないかと懸念する声も上がっています。

 

▶なぜ電子契約では印紙が不要なのか?理由と根拠を分かりやすく解説

電子契約で二段の推定を行うには

上記を踏まえると、電子契約に二段の推定を適用するには「押印のための印章と同じく、電子署名をするための符号や物件が慎重に扱われていること」「それが経験則として認められること」というポイントを抑える必要があります。

 

電子署名の各式に二段の推定のロジックを当てはめると、以下の通りになります。

 

 電子署名の方式
 ローカル署名型リモート署名型事業者署名型
(立会人型)
一段目の推定

【符号】
本人が保有するICカードなどに格納した署名鍵
【物件】
本人のPC

→上記2つによる電子署名なら本人の意思の基づくものと推定

【符号】
本人が事業者に預託した本人の署名鍵
【物件】
事業者のサーバー

→上記2つによる電子署名なら本人の意思の基づくものと推定

【符号】
事業者の署名鍵【物件】
事業者のサーバー

→本人の指示に従い、上記2つにより行われた電子署名なら本人の意思に基づくものと推定

二段目の推定電子署名法第3条により、電子文書の真正な成立が推定できる?

 

【参考】電子署名の方式とは

電子署名のローカル署名型・リモート署名型・事業者署名型(立会人型)は、それぞれどのような方式なのでしょうか。

各方式の特徴について、以下よりご紹介します。

ローカル署名型

ローカル署名型とは、電子署名に必要な秘密鍵が電子契約サービス利用者の手元にある方式です。

必要なデータが入ったデバイス(ICカード)などを利用者自身が持っており、自らのコンピューターで電子署名を付与します。

 

紙媒体の契約書に例えるとそのデバイスが印章にあたり、本人が厳重に保管し得るものであるため、電子署名法第3条を踏まえると比較的推定力が強い方式とも考えられます。

 

しかし電子証明書の配送に伴うコストや時間がかかる、契約者双方の電子証明書の管理が必要、電子署名や契約に必要なアプリが必要などのデメリットもあります。

リモート署名型

リモート署名型とは、電子契約サービス事業者が持つサーバーに利用者の署名鍵が保管されており、利用者はそのサーバーにリモートでログインして電子署名を行う方式です。

近年はオンライン上での電子契約が一般的になり、電子証明書と秘密鍵をサーバー上で安全に管理できるサービスの需要が高まっています。

これにより、昨今の電子契約において主流とされている電子署名方式です。

 

しかしリモート署名型の電子署名だと、ローカル署名型と比べて契約書の真正性を推定する力が弱くなる可能性があります。

 

事業者署名型(立会人型)

事業者証明型(立会人型)とは、電子契約サービスを提供する事業者が本人の代わりに電子署名を行う方式です。

電子契約サービスへのログイン・メール認証を組み合わせた認証方法などで本人確認が行われ、迅速かつ簡単に電子契約を締結できます。

 

その一方で、署名者本人が自ら電子署名を行うローカル署名型・リモート署名型よりも電子署名の本人性が低いと思われがちなことがデメリットです。

事業者署名型での電子契約の真正性を証明するには、その電子署名が署名者本人の指示によるものと立証できるよう、「認証プロセスについて十分な固有性が満たされていること」などのポイントを押さえる必要があります。

反証により二段の推定が覆る可能性もある

二段の推定が適用されても、以下のようなケースでは推定が覆ることもあります。

 

・本人による押印とは考えにくい場合

(印鑑が盗難されている、第三者と印鑑を共用しているなど)

・本人の押印があっても、正しく作成された契約書とは考えられない場合

(押印されただけの紙を悪用して後から契約書を作成するなど)

・本人の押印後に契約書の内容を勝手に変更した場合

・契約書の内容をわざと誤認させて押印させた場合

 

「本人の押印」と「契約書」が揃っているからというだけで、必ずしも契約の真正性が認められるとは限らないことも知っておきましょう。

電子契約でも適用される二段の推定は契約の真正性を証明する概念

二段の推定とは、端的に言うと「契約書に本人の実印が押されている→本人の意思で押された→真正に成立した契約の契約書である」というプロセスで契約書の真正性を判断する概念です。

このプロセスは過去の判例や民事訴訟法を根拠としていますが、「推定」なので反証などがあれば覆る余地もあります。

 

電子契約に関しては、感染症流行によるリモートワークを発端とした法改正から適正に活用できるよう新たな解釈、ルールが規定されています。二段階認証やIPアドレス制限などセキュリティ対策もシステムにより様々です。自社の基準に合うものを比較検討しながら最適なものを選ぶとよいでしょう。

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