ノウハウ 生成AIで「雇用契約」をレビューする手順とプロンプト集|ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot対応
更新日:2026年05月14日
投稿日:2026年05月15日
生成AIで「雇用契約」をレビューする手順とプロンプト集|ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot対応

はじめに:生成AI時代の雇用契約レビュー
雇用契約は、業務委託契約と並んで、人事・法務部門が日常的にレビューする頻出契約のひとつです。にもかかわらず、レビュー工数が大きく、担当者の経験差が出やすい契約類型でもあります。
理由は単純で、「雇用契約書」が単体で完結する文書ではないからです。
雇用契約書は、就業規則・賃金規程・退職金規程・育児介護休業規程・36協定など、社内の多数の規程と連動して効力を持ちます。労働基準法15条で求められる「労働条件の絶対的明示事項」を満たしているかを、契約書・労働条件通知書・各種規程の三者を突き合わせて判定する必要があります。
加えて、2024年4月施行の労働基準法施行規則の改正により、「就業場所・業務の変更の範囲」「有期雇用の更新上限」「無期転換申込機会・転換後の労働条件」などの明示事項が追加されました。
「雇用契約のレビュー」と一言で言っても論点は数十に及び、毎回ゼロから読み下していてはとても回りません。だからこそ、生成AIを活用した初動効率化が現実的な選択肢になります。
そして今、選択肢はChatGPTだけではなく、Claude・Gemini・Copilotなど多くの汎用AIが実用レベルに達しています。本記事は、どのAIを使ってもレビュー品質を担保できるよう、汎用プロンプトと使い分けの考え方をまとめます。
生成AI製品別の向き不向き(雇用契約レビューの観点)
| AI製品 | 向いている用途(雇用契約レビュー観点) | 注意点 |
|---|---|---|
| ChatGPT (GPT-4 / GPT-5系) | 労働条件明示事項の網羅チェック、平易な本人向け説明文の生成 | 個人情報を含む契約原本の取り扱いに注意。法人版(Enterprise / Team)推奨 |
| Claude (Sonnet / Opus系) | 就業規則・賃金規程との突合(長文同士の論理整合性チェック)、英文雇用契約の和訳・分析 | API・チャット環境の整備が必要なケースが多い |
| Gemini (Pro / Ultra系) | Google Workspace連携で人事システム上の労働条件通知書から直接呼び出し | 法務的な深い解説では他社モデルに見劣りするケースもある |
| Copilot (Microsoft 365 Copilot) | Word上での雇用契約書の直接添削、Outlook経由での本人への通知ドラフト | Microsoft 365契約が前提。プロンプト自由度はChat体験よりやや限定的 |
実務では「明示事項チェックはChatGPT/就業規則突合はClaude/Word上の直接修正はCopilot」のようにタスクごとに使い分けるのが効率的です。いずれの製品でも、本記事のプロンプトはそのまま使えます。
生成AIで雇用契約をレビューするメリットと限界
できること(生成AI単体の強み)
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 必要記載事項の網羅チェック | 労基法15条・施行規則5条の絶対的明示事項を満たしているかを一覧で出させる |
| 就業規則との整合性指摘 | 雇用契約書と就業規則を貼り付け、矛盾・齟齬を抽出させる |
| 条項の意味の言語化 | 「固定残業代の労使紛争で無効と判断される典型例」を平易に解説させる |
| 修正案ドラフト | 「会社側に有利かつ適法な書きぶりに直して」と指示し、たたき台を量産する |
| 比較検討 | A案・B案・C案の文言を、有効性リスク・採用市場への見え方の双方で評価させる |
| 要約・整理 | 長尺の就業規則・賃金規程の要点抽出 |
できないこと/苦手なこと(限界)
| 限界 | リスク |
|---|---|
| 自社の就業規則・賃金規程への当てはめ | 「うちは固定残業を40時間で設定している」といった社内ルールは、毎回プロンプトで渡す必要がある |
| 過去の労使紛争・労基署対応との整合性 | 「以前この部署で未払い残業の指摘を受けた」という履歴を踏まえた判断ができない |
| 最新の法令・通達・判例への完全追随 | 学習データの時点で止まっており、2024年改正や直近の最高裁判例は誤解する場合がある |
| ハルシネーション(もっともらしい誤り) | 存在しない労基法の条文番号や、誤った判例を引用することがある |
| 機密性の確保 | プレーンな生成AIに氏名・給与額・人事評価情報を貼ると、個人情報保護法・労安衛法の観点でリスクが残る |
| レビュー結果のナレッジ化 | 1回限りで会話が終わり、組織知として蓄積されない |
この限界を、契約マネジメント基盤(CLM)と連携させて埋めるのが、本記事の後半で触れる「連携型CLM」の発想です。
生成AIで雇用契約をレビューする5ステップ
ここからは、AI製品を問わず使える標準的な手順を紹介します。プロンプトはそのままChatGPT・Claude・Gemini・Copilotで利用できます。
ステップ1:雇用形態を見極める
最初にやるべきは「無期か有期か、フルタイムかパートか、限定正社員か」の判定です。
- 無期フルタイム正社員:解雇規制、整理解雇の四要件、退職金、競業避止
- 有期契約(契約社員):契約期間、更新上限、無期転換申込権、雇止め法理
- 限定正社員(職種・勤務地限定):限定の範囲、限定解除時の取り扱い、解雇の合理性
- パートタイム・有期雇用労働者:同一労働同一賃金(パート有期法8条・9条)、待遇差の説明義務
- 共通:労働条件明示、就業規則周知、安全配慮、ハラスメント防止
【プロンプト1】雇用形態の判定
あなたは日本企業の人事・法務担当です。以下の雇用契約書ドラフトを読み、次の観点で分析してください。
- この契約は「無期フルタイム」「有期」「限定正社員」「パートタイム・有期雇用」のいずれに分類されるか、根拠条項を引用して判定する。
- 上記分類に基づき、特に注意すべき論点を上位5つ挙げる。
- 各論点について、現状の条文がどの程度カバーできているかを「○/△/×」で評価する。
出力は表形式でお願いします。
—– 契約書本文 —–
AI製品の使い分けTips: 就業規則と突合させたい場合はClaude、人事システム上で作業中ならGemini、Word上で直接編集したいならCopilot。
ステップ2:論点を網羅的に洗い出す
【プロンプト2】論点チェックリスト型レビュー
あなたは経験10年以上の企業人事・労務担当です。以下の雇用契約ドラフトを、添付のチェックリストに沿ってレビューしてください。
チェックリスト
- 労働契約の期間(無期/有期、有期の場合の更新上限)
- 就業場所・従事する業務、およびそれらの変更の範囲(2024年4月改正対応)
- 始業終業時刻、休憩時間、休日、休暇、シフト制の場合の決定方法
- 賃金の決定・計算・支払方法、締日・支払日、昇給に関する事項
- 固定残業代(みなし残業代)の有無、対象時間数、超過分の精算規定
- 退職に関する事項(自己都合・会社都合・定年・解雇事由)
- 試用期間の長さ、本採用拒否の要件
- 退職金の有無、計算方法、支給条件
- 賞与の有無、支給条件(在籍要件等)
- 安全衛生、災害補償、休業補償
- 秘密保持・個人情報・営業秘密の取扱い
- 競業避止義務(在職中・退職後)の範囲・期間・代償措置
- 副業・兼業の可否、許可制・届出制の別
- ハラスメント防止規定、相談窓口の明示
- 就業規則・賃金規程との関係(規程優先・契約書優先のいずれか)
- (有期の場合)無期転換申込権の発生条件と通知
- (パート・有期の場合)通常の労働者との待遇差の理由・説明
出力フォーマット
| No | 論点 | 該当条項 | 評価 | 指摘内容 | 推奨修正案 |
|—-|——|———-|——|———-|————|
—– 契約書本文 —–
ステップ3:個別論点を深掘りする
次節のプロンプト集で論点ごとに深掘りします。
ステップ4:修正案を生成する
【プロンプト3】修正案ドラフト
以下の条項について、当社(使用者)の立場で、適法性を確保しつつリスクを低減する修正案を作成してください。
条件:
- 譲歩の度合いを変えた3つのバージョン(強気案/中間案/妥協案)を作成すること
- 各案について「労働基準法・労働契約法・判例法理に抵触するリスク」を5段階で評価すること
- 修正の理由(リスク低減のロジック)を併記すること
- 強気すぎる案は、無効と判断されるリスクも明記すること
—– 対象条項 —–
ステップ5:本人への説明文を作る
【プロンプト4】本人向け要約
以下の雇用契約書の主要な労働条件を、入社予定者本人向けにわかりやすく要約してください。
- 給与の構成(基本給・固定残業代・各種手当)と支払日
- 労働時間・休日・休暇のルール
- 試用期間・本採用に関するルール
- 退職・解雇のルール
- 副業・競業避止のルール
- 入社前に必ず確認しておくべきポイント(3点以内)
文字数は600字以内、敬体で、専門用語は平易に言い換えること。
—– 契約書本文 —–
雇用契約レビュー用プロンプト集(コピペで使える10本/AI製品共通)
ChatGPT・Claude・Gemini・Copilotどれでもそのまま使えます。
プロンプト5:労働条件明示事項の網羅チェック(2024年改正対応)
あなたは労働法に詳しい企業人事担当です。以下の雇用契約書および労働条件通知書を、労働基準法15条・施行規則5条(2024年4月改正後)の明示事項の観点で精査してください。
確認すべき絶対的明示事項:
- 労働契約の期間
- 期間の定めがある場合、更新の有無・更新の判断基準・更新上限
- 就業場所、および就業場所の変更の範囲(改正により追加)
- 従事すべき業務、および業務の変更の範囲(改正により追加)
- 始業終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換
- 賃金の決定・計算・支払方法、賃金締切・支払時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇事由を含む)
- (有期労働契約で無期転換申込権が発生する場合)無期転換申込機会、転換後の労働条件(改正により追加)
各項目について、該当箇所の引用 → 充足度(○/△/×)→ 不足している場合の修正案の順で出力してください。
—– 雇用契約書 —–
—– 労働条件通知書 —–
プロンプト6:固定残業代の有効性チェック
以下の雇用契約における固定残業代条項を、判例法理に照らして精査してください。
確認事項(最高裁判決の要件):
- 明確区分性:通常の労働時間の賃金部分と、時間外労働等の対価部分が明確に区分されているか
- 対価性:固定残業代が時間外労働等の対価として支払われていることが、契約書上明らかか
- 時間数の明示:何時間分の時間外労働に相当するかが明示されているか
- 精算規定:固定残業時間を超過した場合に差額を支払う旨が明記されているか
- 対象労働の特定:時間外・休日・深夜のうち、どの労働を対象とするか明示されているか
- 公序良俗との関係:固定残業時間が長すぎ(おおむね月80時間超)て、長時間労働を前提とする設計になっていないか
各項目について、該当条項の引用 → 有効性リスク(高/中/低)→ 推奨修正案の順で出力してください。
過去に固定残業代が無効と判断された主要判例(少なくとも3件)の事案概要も併せて示してください。
—– 対象条項 —–
プロンプト7:解雇事由・退職条項の精査
以下の雇用契約の解雇・退職条項を、当社(使用者)の立場で精査してください。
観点:
- 解雇事由が労働契約法16条(客観的合理性・社会的相当性)に照らして妥当か
- 普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の各事由が分けて規定されているか
- 整理解雇に関しては、四要件(人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の妥当性)に対応する社内手続が想定されているか
- 自己都合退職の予告期間(民法627条との関係)
- 退職届の様式・提出先・撤回可否
- 競業避止・秘密保持・知的財産帰属など、退職後も存続する義務の明示
一般的な就業規則ひな形と比較した上で、強気・中庸・妥協の3パターンの修正案を提示してください。強気案については「無効と判断されうるリスク」を必ず明記してください。
—– 対象条項 —–
プロンプト8:秘密保持・競業避止条項(在職中・退職後)
雇用契約の秘密保持・競業避止条項を、以下の観点でレビューしてください。
秘密保持
- 「秘密情報」の定義範囲(顧客情報・営業情報・技術情報・人事情報のうちどこまでか)
- 義務の存続期間(在職中/退職後何年か)
- 例外事由(公知情報・自ら開発した情報・法令に基づく開示)の網羅性
- 違反時の損害賠償・差止めの規定
競業避止- 退職後の競業避止義務の有効性を以下の判例考慮要素から評価
- 守るべき会社の利益(営業秘密、独自ノウハウ)の有無
- 従業員の地位・職務内容
- 競業避止の地域的範囲
- 競業避止の期間(通常1〜2年、長くて2年が上限と判断されることが多い)
- 禁止される競業行為の範囲
- 代償措置(退職金加算等)の有無
- 過度に広範な競業避止は、職業選択の自由(憲法22条)との関係で無効と判断されるリスクがある旨も指摘
各論点について、該当条項の引用 → 有効性リスク → 推奨修正案を提示してください。
—– 対象条項 —–
プロンプト9:副業・兼業条項
以下の雇用契約における副業・兼業条項を精査してください。
確認事項:
- 副業を禁止しているか、許可制か、届出制か
- 全面禁止としている場合、**「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(厚生労働省)**との整合性
- 副業禁止が認められうる正当な理由(労務提供への支障、企業秘密の漏洩、企業の名誉信用の毀損、競業)の規定明確性
- 副業時の労働時間通算(労基法38条)への対応手順
- 副業の事前申請に求める情報(業務内容、就労時間、勤務先)
当社の業種・職種に照らして、許可制と届出制のどちらが現実的か、ビジネス影響度も踏まえて推奨案を提示してください。
—– 対象条項 —–
プロンプト10:試用期間・本採用拒否
以下の試用期間に関する規定を精査してください。
- 試用期間の長さ(一般的には3〜6ヶ月、長くて1年が限度と判断されることが多い)
- 試用期間の延長の可否と要件
- 本採用拒否の事由が、判例法理(「留保された解約権の行使」に客観的合理性・社会的相当性が必要)に照らして妥当か
- 試用期間中の労働条件(賃金等)が本採用後と異なる場合、その明示
- 試用期間中・本採用拒否時の解雇予告(労基法21条、入社後14日を超えると予告必要)の取り扱い
不足があれば追加条項案を、過剰であれば削除提案を、それぞれ理由とともに提示してください。
—– 対象条項 —–
プロンプト11:同一労働同一賃金(パート有期労働者向け)
相手方が短時間労働者または有期雇用労働者であることを前提に、以下の雇用契約を**パートタイム・有期雇用労働法(8条・9条)**の観点で精査してください。
確認事項:
- 通常の労働者との間で、基本給・賞与・各種手当・福利厚生に待遇差があるか
- 待遇差がある場合、それが不合理な相違(パート有期法8条)に該当しないか、職務内容・配置変更範囲等を踏まえて評価
- 通常の労働者と「職務内容」「配置変更の範囲」が同一の場合、差別的取扱の禁止(同法9条)への抵触リスク
- 短時間・有期雇用労働者からの待遇差に関する説明義務(同法14条)に対応できる説明資料の有無
違反リスクのある条項があれば、修正案とともに指摘してください。
—– 雇用契約書 —–
プロンプト12:就業規則との突合表生成
当社の就業規則・賃金規程と、本人と締結する雇用契約書を比較し、差分を表形式で整理してください。
出力フォーマット:
| 論点 | 就業規則の規定 | 雇用契約書の規定 | 整合性(一致/矛盾/契約書のみ/規則のみ) | 適用される条件(労契法7条・10条等の観点) | 推奨対応 |
|——|—————-|——————|——————————————–|———————————————|———-|
特に、雇用契約書の労働条件が就業規則を下回る場合は、就業規則の基準が適用される(労契法12条)点に注意して指摘してください。
—– 就業規則 —–
—– 雇用契約書 —–
AI製品の使い分けTips: このプロンプトはコンテキスト長が長くなるためClaudeまたはGemini Pro系が安定。
プロンプト13:レビューサマリの自動生成
以下の雇用契約のレビュー結果を踏まえ、社内決裁用のサマリを作成してください。
構成:
- 契約概要(雇用形態・職種・契約期間・主要待遇、3行)
- 主要論点と対応方針(5項目以内、各1〜2行)
- 残存リスク(無効リスク・労使紛争リスク・採用市場での見え方)と許容根拠
- 決裁者への確認事項(あれば)
全体で800字以内、です・ます調。
—– レビュー結果一式 —–
プロンプト14:英文雇用契約の和訳+ポイント抽出
以下の英文雇用契約(Employment Agreement)について、次の作業をお願いします。
- 全文を自然な日本語に和訳する
- 日本企業の人事・法務担当として、特に注意すべき条項上位5つを抽出する(At-will employment、Non-compete、Confidentiality、IP Assignment、Choice of Lawなど、日本法と発想が異なる条項を中心に)
- 当該契約を日本の労働法に服する社員に適用する場合、調整・置き換えが必要な条項を指摘する(例:At-will解雇は日本では原則できない、Non-compete条項の有効性は厳格に判断される、等)
—– Employment Agreement 本文 —–
AI製品の使い分けTips: 英文契約の和訳・分析ではClaudeの精度が頭ひとつ抜けている。
生成AIを業務利用するときに必ず押さえる3つの注意点
雇用契約は個人情報を多く含むため、業務委託契約以上に慎重な取り扱いが必要です。
1. 個人情報・機密情報の取り扱い
各AI製品の利用規約と学習利用ポリシー(2026年5月時点の整理):
| 製品 | 学習利用 | 法人利用での非学習保証 |
|---|---|---|
| ChatGPT (Free / Plus) | 利用される可能性あり(オプトアウト設定可) | Enterprise / Team / API で非学習を契約上担保 |
| Claude | 商用利用では原則学習に使用しない | Anthropic Console / API で明示 |
| Gemini | Google Workspace内では契約上非学習 | Workspace契約により担保 |
| Copilot (Microsoft 365) | Microsoft 365テナント内で非学習 | Microsoftの企業データ保護に準拠 |
雇用契約には、氏名・住所・生年月日・給与額・人事評価・健康情報など、個人情報保護法上の個人情報および要配慮個人情報が含まれます。少なくとも以下のいずれかを採るのが現実的です。
- 各AIの法人向けプラン(Enterprise / Team / Workspace / 365)を契約し、データ非学習を担保する
- API経由で社内に閉じたUIを構築する
- 氏名・金額・固有名詞をマスキングしてから貼り付ける(雇用契約では項目が多く現実的でない)
- そもそも社員の個人情報を含む契約原本は汎用AIに直接渡さず、契約管理基盤側で連携処理する
2. ハルシネーション
生成AIは、存在しない労基法の条文番号や、誤った判例(実在しない事件名)を、それらしく引用することがあります。
- 条文番号・判例の引用が出てきたら、必ず一次資料(e-Gov法令検索、裁判所HP、厚労省ガイドライン等)で裏取りする
- 「断定」ではなく「論点提示と一次資料への誘導」のために使う、と割り切る
- AIの出力をそのまま本人や決裁者に提出しない
3. 学習データの古さ
2024年4月施行の労働条件明示ルール改正、フリーランス保護新法、育児・介護休業法の改正、最低賃金の改定など、直近の改正には対応できない、または不正確な可能性があります。
最新法令への対応は、e-Gov・厚生労働省ガイドライン・専門書で必ず一次確認してください。
生成AI単体の限界と「連携型CLM」という解決策
壁1:プロンプトを毎回貼り直す手間
チェックリスト・就業規則・賃金規程・自社の人事方針を毎回貼るのは現実的でない。
壁2:就業規則・賃金規程との整合性
「うちの賃金規程では固定残業を40時間で運用」「営業職は事業場外みなし」といった社内コンテキストは生成AIに蓄積されない。
壁3:レビュー結果がナレッジ化しない
組織知として「何回・どんな指摘が・誰の判断で・どう着地したか」が残らないと、AI活用が個人技で止まる。
壁4:締結後の労務管理に繋がらない
有期契約の更新管理・無期転換申込権の通知期限・人事異動に伴う労働条件変更といった締結後の労務管理に繋がらない。
解決の方向性:内蔵AI型ではなく「連携型CLM」
| アプローチ | 特徴 | 限界 |
|---|---|---|
| 内蔵AI型CLM | ベンダー独自AIが組み込まれており製品の枠内で完結 | 使えるAIがベンダー固定 |
| 連携型CLM(Open CLM) | CLMは正本管理に徹し、外部の汎用AI(ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot)を自由に呼び出して使う | 設計思想が組織側にも求められる |
ContractS CLMが採用しているのは後者です。
- 締結前:ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot・社内ナレッジ(就業規則・賃金規程・過去判例集)を組み合わせてレビュー
- 締結時:合意済みの正本を一元管理(個人情報を含むため厳格なアクセス制御)
- 締結後:有期契約の更新時期・無期転換申込権の発生時期・労働条件変更時の通知を、契約データの正本に対して管理
まとめ:生成AIは「初動」を、CLMは「正本と労務管理」を
雇用契約のレビューは、論点が多く、就業規則・賃金規程など参照すべき社内文書も多い業務です。生成AIを、設計されたプロンプトで使うことで、明示事項チェック・固定残業代の有効性判定・解雇規定の妥当性確認・本人向け説明文の作成を大幅に効率化できます。
そして、どのAI(ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot)を選んでも本記事のプロンプトは使えます。それぞれの強みを意識して使い分ければ、さらに効率化が進みます。
ただし、生成AI単体には限界があります(プロンプト同梱・規程整合・ナレッジ蓄積・締結後管理)。これを埋めるのが連携型CLMです。締結前のレビューは自社で選んだ最適な汎用AIで行い、締結後の正本管理と労務運用はCLMで行う。「AIは選び、契約は1箇所に集める」——これがContractSが提唱する次世代の契約マネジメントのかたちです。
次の一歩
- 本記事のプロンプト集を就業規則・賃金規程と一緒にテンプレート化し、まずは1件の採用案件で試す
- 個人情報の扱いを社内で整理し、各AIの法人向けプランを準備する
- 雇用契約データの正本管理を、契約マネジメント基盤側に寄せる検討を始める
ContractS CLMでは、汎用AIと連携しながら契約レビュー・締結・運用までを一気通貫で支える「連携型CLM」を提供しています。詳細な機能・導入事例については、サービスページをご覧ください。
本記事はContractS株式会社のコンテンツマーケティングチームが、人事・法務実務担当者向けに執筆したものです。具体的な雇用契約・労務案件への適用にあたっては、必ず自社の人事・法務担当者・顧問社労士・顧問弁護士の確認を経てください。本記事はリーガルアドバイスではありません。














